主張

どうするNHK 新会長は「改革」の先頭に

記者会見するNHKの稲葉延雄新会長=25日、東京都渋谷区のNHK放送センター(代表撮影)
記者会見するNHKの稲葉延雄新会長=25日、東京都渋谷区のNHK放送センター(代表撮影)

NHKの新会長に就任した稲葉延雄氏が記者会見し、「私の役割は(改革の)検証と発展だ」と語った。

その抱負通り、公共放送としての信頼回復のため、改革の進捗(しんちょく)を明らかにし、さらなる改革の先頭に立ってほしい。

気がかりなのは、みずほフィナンシャルグループ出身の前田晃伸前会長が進めた改革について「大胆なので若干のほころびが生じているかもしれない」と語ったことである。

どこが「大胆」で、何が「ほころび」なのか、理解に苦しむ。これまでが受信料という安定収入にあぐらをかき、ぬるま湯体質にすぎたとの反省が感じられない。

稲葉氏は日銀出身で、NHK会長は6代続けて外部からの起用となった。それは内部昇格では思い切った改革が困難とみられたからである。日銀という大組織にありがちな「お役所意識」を引きずり、「大胆」な改革などと追従(ついしょう)するなら、役割は果たせまい。

NHKの受信料収入は年間約7千億円にのぼる。一般企業の内部留保に当たる「繰越金」の残高は令和3年度末で2200億円を超える。前会長は受信料について、今年10月から、地上波だけの「地上契約」と、地上波と衛星放送(BS)が視聴できる「衛星契約」をともに1割下げることを決めている。

それも「もうけ過ぎ」との批判に押された格好だった。値下げしても衛星契約は月額1950円となお割高だ。さらなる受信料値下げを実現する改革が求められていることを忘れてはならない。

大幅な事業支出の削減など業務効率化を進めてきたというが、民間では当たり前だ。コストカットによる番組の質低下などの懸念もあるようだが、「あればあるだけ予算を使ってしまう」などと揶揄(やゆ)された甘えたコスト意識は払拭できたのか。

番組内容について稲葉氏は「報道面ではしっかりと取材し、真摯(しんし)な態度で確かな情報をお届けしたい」と語った。公共放送として当たり前だが、それが果たされてこなかったのが問題なのだ。

稲葉氏には、何より公正で良質な番組づくりと、それを支える組織統治(ガバナンス)改革の手腕が問われる。今年の大河ドラマは「どうする家康」だが、NHK改革を「どうする」などと躊躇(ちゅうちょ)してはならない。

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