米国の全フライトが一時停止、原因となったシステム障害が浮き彫りにした積年の課題

情報の共有や安全な飛行に欠かせない「NOTAM(ノータム)」と呼ばれるシステムの障害が原因で、全米のフライトが一時的に停止した。この問題は、長年にわたって蓄積されてきたシステムの課題を浮き彫りにしたと言っていい。

米連邦航空局(FAA)が2023年1月11日早朝から午前9時(米東部時間)まで、米国全土で飛行機の離陸を停止させた。このような離陸停止は、米国では01年9月11日に発生した同時多発テロ以降では初めてとなる。何千便ものフライトが遅延しただけでなく、さらなる遅延や欠航による混乱は終日にわたって続いた。

FAAのシステムに詳しい人物によると、今回のような機能停止は前例がないという。また、FAAが複雑なプロセスを経てシステムのクラウドへの移行を進めるなかで、蓄積した課題が一気に噴出したかたちになったと語る。

今回の事態は、リアルタイムのデータと警告をFAAがパイロットに配信するために使う重要なシステムの機能停止によって引き起こされた。NOTAM(ノータム=Notice to Air Mission)アラートとして知られるこのシステムは、情報の共有や安全な飛行のための基本的なロジスティクスの調整に不可欠である。

FAAによると、フライトの一時停止は「FAAがフライトと安全性に関する情報の完全性を検証できるようにするため」に実施された。また、NOTAMの機能停止の原因はいまのところ明らかではないという。ホワイトハウスは1月11日朝(米国時間)、システムの停止がサイバー攻撃によるものという証拠はないが、運輸省に今回のインシデントの徹底的な原因究明を指示したと発表した。

「今日のこの出来事は、ハリケーンが米国に上陸するよりも、吹雪で空港が閉鎖されるよりも大きな影響があります。これは国全体のシステム全体に影響を与えました」と、エンブリー・リドル航空大学航空学部のマイケル・マコーミック助教授は、インシデント発生後の記者会見で報道陣に語っている。

FAAのカナダ国内におけるカウンターパートとしての役割を果たす非営利法人「NAV CANADA」も、11日に自前のNOTAMシステムが短時間停止したと発表した。NAV CANADAの広報担当者は、「不具合の根本原因」を調査中としたうえで、今回の問題がFAAのトラブルと関連しているとは考えていないと説明している。

数十年前の非効率なシステム

NOTAMは何十年も前のシステムで、扱いづらく非効率的であるとパイロットから大いに不評を買っている。NOTAMアラートは、モールス符号、電信、無線航法システム「ロランC」など、長い年月をかけて数多くのテクノロジーから進化してきたコード化された並列言語で書かれており、数十ページから数百ページにも及ぶことがある。

NOTAMは、同じアラートが複数回にわたって繰り返されていたり、重要ではない詳細情報が数週間または数カ月連続でシステムに自動的に追加されていたりすることがよくある。連邦政府の調査によると、エア・カナダの航空機がサンフランシスコ空港の滑走路に着陸する際、ほかの4機と衝突しそうになった2017年のインシデントは、解読しづらいNOTAMが原因であった可能性が高いことが明らかになっている。

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