組織委元次長が主導 独禁法で立件へ 五輪談合

東京地方検察庁=東京都千代田区(川口良介撮影)
東京地方検察庁=東京都千代田区(川口良介撮影)

東京五輪・パラリンピックを巡る談合事件で、大会組織委員会大会運営局の元次長が、入札の公募開始前から企業側の担当者と面会して受注希望などを聞き取り、内容を組織委に出向していた広告大手「電通」の担当者に伝えていたことが28日、関係者への取材で分かった。東京地検特捜部は、元次長が電通の担当者に企業側の応札希望の状況を取りまとめた「リスト」の更新を指示するなど談合を主導した疑いがあるとみて、独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑での立件へ向け最終調整を続けているもようだ。

関係者によると、元次長はテスト大会の計画立案支援業務の入札に参加予定だった企業の担当者と面会。「この会場をお願いします」などと伝えていた。

その後、聞き取った応札の可否に関する内容などを組織委に出向していた電通の担当者と共有し、入札案件ごとに企業名が割り振られたリストの更新を命じていたという。電通の担当者は、電通社内で入札関連業務を担当していた幹部に、元次長から聞いた情報を伝えていたとみられる。

リストは、発注方法が決まる前の平成29年から組織委の専任代理店だった電通が作成した。関係者によると、元次長は特捜部の任意の事情聴取に「談合の認識はない」と説明。電通の複数の幹部は談合の事実関係を認めているという。

談合が疑われている入札は30年に計26件実施され、電通や業界2位の「博報堂」など9社と、うち2社による共同事業体が総額約5億4千万円で落札した。

独禁法の禁じる不当な取引制限は、入札参加企業が事前に受注調整に関する合意をし、企業間で相互に競争を制限したと立証されると成立する。関係者によると、今回の入札に参加した企業が集まり話し合う機会などはなかったが、特捜部は発注者側の元次長を「中継地」として談合が行われたとみているもようだ。

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