29日に開催される「第42回大阪国際女子マラソン」(産経新聞社など主催、奥村組協賛)で復帰レースに挑む〝ママさんランナー〟がいる。2015年世界選手権(北京)代表の前田彩里(31)=ダイハツ=だ。20年12月に第1子を出産し、約4年ぶりとなるマラソン復帰戦のテーマは「RE START!」。今年10月に開催される「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」の出場権を得られる2時間24分以内が目標だ。24年パリ五輪という夢に向かって、母親になっても走り続ける。(大石豊佳)
「出し切りたい」
復帰戦の舞台は9年ぶりの出場となる大阪国際を選んだ。佛教大4年だった14年、初マラソンで当時の学生新記録となる2時間26分46秒をたたき出し、衝撃のデビューを飾った思い出の地。「大阪のイメージはすごくいい。今回は産後で初のマラソンになるので、またいいイメージを作れるように」と思い描く。
これまで五輪代表候補として期待されながらも、けがに泣いてきた。16年リオデジャネイロ五輪は選考レースに出場できず、東京五輪代表選考会だった19年のMGCも欠場。その後の選考会にも間に合わず、東京五輪を逃した。「そこ(東京五輪の選考会)で出て代表になれなかったら辞めていたかもしれないけど、不完全燃焼だった。出し切って終わりたい」。走り続ける理由は明快だった。
20年12月に長女の彩葉(いろは)ちゃんを出産。産休期間も「(競技に)戻るつもりだったので、あまり走らない時間をつくりたくなかった」と体を動かし続けた。臨月に入る前までランニングは欠かさず、出産直前までウオーキングで復帰後をイメージしていた。
産後も3カ月ほどでジョギングを始め、娘が1歳になるころにはチームに合流し、本格的な練習を再開した。「授乳も終わって体もちょっと変わってきて、いいタイミングで合流できた。みんなに引っ張られながら、少しずつ順調に」。一歩ずつ復帰へのステップを踏んできた。
育児で切り替え
母親になって生活が大きく変わり、競技との向き合い方も変化した。「考えることが陸上だけじゃなくなったので、客観視できている。リラックスした状態でトレーニングできているかな」。かつてはシューズを脱いでも常に走ることを考え、少しでも足に痛みがあれば頭から離れなかった。今では練習以外は、子育てで頭はいっぱい。「毎日叱ってます。2歳になって、いたずらばっかり」と苦笑いを浮かべながらも「いい意味で頭の切り替えはできている」と話す。
2時間24分以内で走れば順位にかかわらず、パリ五輪代表選考会となるMGCの出場権を得られる。過去6度のマラソンで2時間24分を切ったのは、自己ベストをマークした15年名古屋ウィメンズの1度しかなく、自らに課すハードルは高い。「他の人というより、自分との戦いという感じで今回は挑みます」。母親になり、強くなった姿を浪速路で披露する。