茨城県つくば市の県営洞峰(どうほう)公園の改修計画を巡り、県とつくば市が対立している。民間資金の活用で魅力的なキャンプの「グランピング」施設などを整備したい県に対し、市は環境破壊や治安悪化を懸念する市民団体の意見なども踏まえ、計画の一部変更を求めており、合意に向けてはなお曲折が予想される。
年明け、池の周囲で市民らが散策を楽しんだり、ジョギングしたりして時を過ごす。昭和55年に開園した洞峰公園は広さ約20ヘクタール。市中心部に位置しながら樹木で囲まれた美しい景観にも恵まれ、市民の憩いの場となっている。
県と市の対立は昨年3年、県が民間資金を活用して整備・運営を図る「パークPFI」(公募設置管理制度)方式を導入して、公園にグランピング施設やバーベキュー場を建設する計画を発表したことに端を発する。
背景には、公園にかかる県の負担がある。県によると、洞峰公園の管理運営費は年間約1億5千万円。県は集客施設の収益を充てることで、管理運営費は約9千万円に減ると試算する。すでに施設建設のための事業体を選定した。
これに公園のあるつくば市が反発。五十嵐立青(たつお)市長は昨年4月の会見で飲酒や煙、匂いなどの問題点を挙げ、「文教地区へのグランピング施設設置は妥当でない」として県に計画撤回を求めた。
会見で〝情報戦〟
それ以降、県とつくば市の会見では〝情報戦〟も交えたつばぜり合いが展開される。
昨年10月の知事会見では、県民1千人へのアンケートとして、計画に賛成が50・3%で反対の12・8%を上回り、つくば市民に限っても賛成39・3%、反対27・4%とする集計を公表。大井川和彦知事は計画を一部修正した上で進める考えを示した。
対するつくば市も翌11月、「県が集計しなかった昨年7~8月のアンケート結果」として、事業ができない場合の代替案で県が提示した「テニスコートや駐車場などの値上げ」を51・75%が容認しているとの集計結果を示した。
五十嵐市長は「半数以上が『値上げでいい』と回答したのは非常に重い」とし、県に対し施設利用料の値上げや、市民や有識者を交えた公園のあり方を検討する協議会の設置を要望した。
大井川知事は値上げについて「利用者の一部に負担を押し付ける、バランスが非常に悪いやり方」とし、協議会については「説明会やアンケートで県民やつくば市民の考え方を聴取しており、必要性は認められない」と反論する。
落としどころ
こうした中、新たな落としどころとして持ち上がるのが「市営公園への移管」だ。
五十嵐市長は「あらゆる可能性を検討しており、(移管は)そのうちの一つ。人件費や樹木の維持管理費など判断に必要な情報を県と共有しているところ」。大井川知事も「修正案で改修を進めるか無償で移管するかいずれか」とし、移管実現の成否が今後のカギを握るとみられる。
利用者の間でも、賛否が分かれているようだ。
近くに住む無職の女性(70)は「毎日のように来るが、四季折々の自然が素晴らしく、このままにしてほしい」と改修には否定的。一方、つくば市の学生(21)は「グランピング施設やバーべキュー場ができたら一度は行きたい。公園を訪れる人は増えると思う」と期待を口にしていた。
パークPFI(公募設置管理制度) 平成29年の都市公園法改正に基づき、官民連携による公園の整備・管理運営の推進策として創設された制度で、自治体の公園や国営公園が対象。公園管理者は飲食店、売店などの運営者を公募で選ぶ。収益を広場などの園内整備に還元する仕組み。洞峰公園でも、維持管理費の削減と魅力向上の両立を目的に制度を導入した。
記者の独り言 40年以上前の高校時代、毎日のように洞峰公園を走っていた。転勤で遠距離恋愛中の彼女(妻)と公園を歩き、別れを惜しんだこともある。転勤を繰り返して再びつくばに戻り、幼かった息子とコイに餌をやるのが楽しみだった。今も気がめいったとき、気が付けば公園にいることがある。思えば洞峰公園は記者の人生に欠かせない存在で強い思い入れがある。県と市はそんな人が大勢いることを知ってほしい。(篠崎理)