令和5年は卯年! 当園ではウサギ目ウサギ科カイウサギを飼育しています。彼らはウサギの一種「アナウサギ」を原種とする家畜です。当園では穴を掘ったり、塩化ビニール管に隠れたり、落ち葉を食べたりする様子が見られます。
ペットとして飼育されているイメージが強いカイウサギですが、このような姿を見ると野生での暮らしを垣間見ているような気持ちにもなります。
茨城県内にも野生のウサギは生息しており、「ニホンノウサギ」といいます。一度だけ常陸太田市で見たことがありますが、田んぼの近くの側溝でじっとしていました。近づいても逃げず、今思うと恐怖で動けなくなっていたか、動けなくなるくらい弱っていたのかもしれません。そのまま立ち去りましたが、ニホンノウサギは本来、夜行性で日中は人前に現れるのが珍しい動物なので、私の気分はとても高揚していました。
ノウサギとカイウサギの違う点ですが、カイウサギの原種である「アナウサギ」は、巣穴を掘って群れで暮らします。生まれたばかりの赤ちゃんはほとんど毛も生えておらず、目も開いていないため、独り立ちまでに時間を要します。家畜であるカイウサギもそれは変わらず、当園も群れで飼育しており、互いに寄り添う姿が見られます。
一方、ノウサギは巣穴を掘らず、浅いくぼみの中で子育てをします。群れも作らず、基本的には単独行動。生まれた赤ちゃんはすでに毛が生えていて、歩くこともできます。巣穴を作らないため天敵に狙われやすい分、子供の成長が早いと考えられています。
彼らの天敵はキツネやノネコに猛禽類(もうきんるい)などたくさんいますが、トレードマークである長い耳で小さな音も逃さず、常に周囲に気を配り、狙われているのが分かれば、動物界でも屈指の発達した後肢で猛ダッシュ! その速さはカイウサギにも受け継がれています。
ペットとしても大人気の彼らは毛がふわふわで、なでると気持ちが良く、以前は当園のふれあいコーナーでも活躍していました。
しかし本来、ウサギの動きは機敏で、来園者の子供さんらが抱いても膝の上から逃げたり、抵抗して指を噛んでしまったりする個体もおり、実はふれあいが難しい動物でした。新型コロナウイルスの感染拡大時には密を避けるため、職員から来園者へウサギを手渡すことができず、コーナーは中断されました。
そして、コーナー再開を契機にウサギを対象から外し、現在は比較的おとなしく、なでやすいモルモットだけが来園者のお相手となっています。
世界中の動物園が現在、飼育する動物が健康で、快適に過ごせるよう環境を整備する「動物の福祉」に取り組み始めています。ウサギ年を契機に、人と動物の関わり方をもう一度考えてみるのも良いかもしれませんね。(飼育員 川添久美子)
日立市かみね動物園
茨城県日立市宮田町5の2の22▽開園時間=午前9時~午後4時15分(3月~10月は午後5時)▽入園料=高校生~64歳は520円、4歳~中学生100円、3歳以下と65歳以上、障害者と付き添い(1人につき1人まで)は無料。団体割引あり▽0294・22・5586