「第42回大阪国際女子マラソン」は29日に号砲を迎える。パリ五輪代表選考会となるMGCの前哨戦ともいえるレース。新たな決意を胸にスタートラインに立つ選手の姿を追った。
入社9年目で初挑戦
トラックや駅伝で活躍してきた筒井咲帆(ヤマダホールディングス)が念願の初マラソンに挑む。入社9年目。「自分には難しいかなと感じた時期もあった」というが、昨年に意を決して挑戦の気持ちを固めた。「今までの自分から抜け出したい気持ちもあった。新たな一歩を踏み出してみたい」。号砲が鳴る瞬間を心待ちにしている。
昨年5月に日本選手権1万メートルに出場した後は、地元関西の大阪国際を初舞台と決め、じっくりと時間をかけてマラソン練習に取り組んできた。距離走を何本もこなした。「まずは長く走る位置付けだったけど、今までやってきた中で一番好きな練習だった」。スピード練習とは一味違った、走る喜びを実感できた。
初マラソンが1カ月後に迫った昨年末、突然の訃報に接した。2021年2月までヤマダホールディングスで指揮を執っていたシスメックス監督の森川賢一氏が12月29日、脳梗塞のため急逝した。入社以来、約7年指導を受け、監督が移籍する際もついていくかどうかを悩んだ。「教えてくださったことは、ずっと胸にある。マラソンを走っている姿を見てほしかった」。思い出を語ろうとすると、涙が頰を伝った。今回は恩師にささげるレースでもある。
食事量は2倍に
24年パリ五輪はまだ大きな目標なのかもしれない。まずは代表選考会として10月に開催される「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」の出場を目指し、今後も海外レースを含めてマラソンを主戦場にしていく考え。今回は新たな自分を見つけるためのレースだ。
マラソン選手としての体作りのため、寮の食事も2倍になった。納豆が大好物で、これまでに約270の銘柄を食べ比べ、パッケージも全て取り置いているほど。試合の朝も必ず納豆を食べるという。「前半から攻めるというより、中間点付近の坂を下ってから後半にかけて乗っていきたい」とレースを思い描く。初の42・195キロの道のりがパリへと続くと信じ、粘り強く走る覚悟だ。(丸山和郎)
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つつい・さきほ 1996年1月19日生まれ、京都府出身。京都・乙訓(おとくに)高から2014年にヤマダ電機(現ヤマダホールディングス)に入社。21年の日本選手権1万メートルで5位入賞。今回が初マラソンで、ハーフマラソンの自己ベストは1時間9分14秒(20年全日本実業団ハーフ)。