リニア中央新幹線の整備が1人の知事に翻弄されている。環境への影響を懸念する静岡県の川勝平太知事が県内工区の着工を認めず、JR東海が目指す東京・品川-名古屋間の令和9年開業に「赤信号」がともった。変化する論点や挑発的な発言の数々に、同社のみならず国や沿線自治体も対応に苦慮。地元では〝知事離れ〟の動きがみられ、国も事態打開に向けてより強い関与を始めた。包囲網は広がるのか。
「リニアは存亡の危機にある」。川勝氏は昨年末の定例記者会見で、自身の現状認識をそう説明した。
同県は県北端の南アルプス地下を通るトンネル工事により、同エリアを水源とする大井川水系の流量や南アルプスの生態系に影響が及ぶことを懸念している。