医師に聞く「冬季うつ」の原因と予防法 日照時間の短さが症状に影響

「冬季うつ」は、日照時間の短さが原因の一つとして考えられている(イラストは東京横浜TMSクリニック提供)
「冬季うつ」は、日照時間の短さが原因の一つとして考えられている(イラストは東京横浜TMSクリニック提供)

全国各地で冬の厳しい寒さが依然として続く中、冬場の季節的な要因で心身に不調をきたす「冬季うつ」。症状は食欲不振、不眠といった一般的な症状として知られる鬱(うつ)病と比べ、過食や過眠といったケースが多いのが特徴だ。冬季うつの原因や予防法などについて、東京横浜TMSクリニック(東京都港区)や元住吉こころみクリニック(川崎市)などを運営する医療法人社団「こころみ」理事長で精神科医の大澤亮太さんに話を聞いた。

主な症状は「過眠や過食」

医療法人社団「こころみ」理事長で精神科医の大澤亮太さん(東京横浜TMSクリニック提供)
医療法人社団「こころみ」理事長で精神科医の大澤亮太さん(東京横浜TMSクリニック提供)

冬季うつは医学的な専門用語ではなく、秋から冬にかけて鬱の症状がたびたび現れる季節性感情障害(気分障害)や、季節性の特徴を伴う反復性鬱病の総称で、「ウインター・ブルー」とも呼ばれている。冬季うつの症状について、大澤さんは「特徴的なのは過度の倦怠(けんたい)感や疲労感。通常の鬱(の症状)では不眠や食欲不振などが一般的だが、(冬季うつの症状では)過眠や過食を伴いやすい」と説明する。

冬季うつは、秋から冬にかけて鬱の症状が始まり、春先にかけて回復するパターンを繰り返すことが多い。国内の罹患(りかん)者数は不明だが、欧米での研究報告では、生涯有病率(ある人間が一生のうちに、その病気にかかる確率)で0・7~2・4%といった数字も示されている。

冬季うつの原因の一つとして考えられているのが、冬場の日照時間の短さだ。

大澤さんは「日照時間が短くなると、メラトニン(体内時計を整える作用がある物質)の脳内への分泌が遅れるといわれる。そうなると、睡眠時間にずれが生じ、生活のリズムが崩れやすくなる」とした上で「冬場はどうしても運動不足など活動が低下するため、ホルモンへの影響が大きくなることから、ホルモンの影響をうけやすい女性の方が(症状が)多い」と指摘する。

ただ、ホルモンの変化が冬季うつと具体的にどのように関係しているかは、現時点でまだその全容は解明できていないという。

意識的に「太陽光」浴びる時間を

冬季うつの症状をある程度予防する上で有効となるのが、「太陽光を浴びる」ことだ。

「太陽光には(人間の)行動を活性化させる要素がある。太陽光による刺激によって、体内時計のリズムを整えることもできる」(大澤さん)ため、朝に軽く散策するといった、太陽光を浴びる時間を意識的に増やすことが予防につながるという。

冬季うつの症状を含め、鬱の症状を発症した場合の治療法としては投薬からスタートするのが一般的だが、高照度の光を患者の体に照射する「光線療法」が行われることもある。

大澤さんは「コロナ禍での在宅勤務だと、なんとか帳尻合わせをしている方もいるかもしれないが、社会生活にも支障が出ていると感じた場合には、早めに(精神科などの専門医に)相談した方がよい」と話している。(浅野英介)


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