<独自>未成年者の性被害抑止にAIシステム導入へ 兵庫県警、SNSを自動検索

未成年者が性犯罪に巻き込まれるのを防ごうと、兵庫県警が、人工知能(AI)を活用して交流サイト(SNS)上の問題投稿を自動検出する新システムの導入を検討していることが27日、県警への取材で分かった。手作業で行っている現状のサイバーパトロールを効率化し、捜査や発信者への警告に人的資源を集中することで被害の抑止を目指す。

新システムでは、女子高生を意味する「JK」や、買春時にホテル代も必要という意味の「ホ別」、家出した少年少女が受け入れ先を探す際の「神待ち」など、犯罪につながる恐れのある検索ワードを設定。AIが問題投稿を自動的に検索した上で、未成年者が関連している可能性の高い投稿を抽出し、捜査員に知らせる仕組みを想定している。

現状のサイバーパトロールは、県警少年課の捜査員らがスマートフォンでツイッターを検索。問題のある投稿内容とアカウントを用紙に書き出した上で、投稿者に対し「このツイートは児童買春などの被害につながる恐れがある」と警告メッセージを発信している。

スマートフォンを操作し、サイバーパトロールを行う兵庫県警少年課の捜査員=県警本部
スマートフォンを操作し、サイバーパトロールを行う兵庫県警少年課の捜査員=県警本部

ただ、県警が保有するスマホの台数が少なく手作業で対応するため、警告できるのは多くても1時間に20件程度。パトロールの専従捜査員も不在で、同課によると、警告メッセージの件数は令和3年が2475件だったのに対し、4年は11月末時点で737件にとどまるなど、ばらつきが出ていた。

県警は新システムの関連予算を新年度予算案に盛り込み、県議会で可決されれば開発に着手する。詳細な仕様は、災害や事件事故のSNS投稿をAIでリアルタイムに収集・発信する情報解析会社「スペクティ」(東京)が担当する予定。

システムが導入できれば、捜査員は投稿内容の確認などに専念させ、効果的な性犯罪抑止につなげる方針という。

犯罪巻き込まれる未成年絶たず

女子高生とみられる人物がツイッターに上げた投稿(一部画像処理しています)
女子高生とみられる人物がツイッターに上げた投稿(一部画像処理しています)


SNSでのやり取りをきっかけに未成年者が性犯罪に巻き込まれるケースが後を絶たない。警察当局はサイバー捜査などを通じて問題投稿に警告を発しているが、未成年者側がSNSで気軽に買春を持ちかけるなど犯罪を誘発している側面もあり、いたちごっこの状態が続いている。

《ホ別1・5どうですか!》

今月23日、ツイッターに投稿されたメッセージ。「裏アカ」と呼ばれる匿名のアカウントで、女子高生とみられる人物が、ホテル代とは別に1万5千円を払えば買春に応じる内容の投稿だ。

投稿者本人が18歳未満だった場合、対価を提供して性交したり、わいせつな動画を購入したりすれば、児童買春・ポルノ禁止法違反の罪に問われる。ただ、未成年者になりすます場合もあり、投稿内容だけで18歳未満かどうかは分からない。

こうした投稿はインターネット上にあふれている。兵庫県警によると、現状のサイバー捜査では膨大な問題投稿の中から未成年者かどうかや、警告すべき内容かどうかを一つ一つ確認するのに相当の労力を要するという。ある捜査関係者は「警告を発してもすぐにアカウントを変えられてしまうなど、いたちごっこの状態だ」と対応の難しさを打ち明ける。

警察庁によると、SNSでの交流をきっかけに犯罪に巻き込まれた18歳未満の被害は、統計を取り始めた平成29年以降、毎年2千件近くに上る。ただ、大阪府警が令和3年、女子高生3人を買春したとして会社員の男らを摘発した事件では、女子高生側がツイッターで「援助交際」の相手を募集して計約1万人のフォロワーを集めるなど、未成年者側が積極的に働きかけるケースもある。

警察幹部は「SNSを通じ、未成年者が強制性交や殺人など凶悪事件に巻き込まれる恐れもある」とし、未成年者側のSNSの利用にも警鐘を鳴らしている。(倉持亮)

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