千葉県市川市の質店や同県大網白里市のリサイクルショップで今月発生するなどした各地で相次ぐ広域強盗事件で、警察庁は27日、関係する警察本部を集めた捜査会議を開いた。大網白里市の事件で千葉県警に逮捕された男の携帯電話には東京都狛江市で殺害された高齢女性宅に強盗に入るという趣旨の記録があった。特定の事件で同庁が県警などの捜査幹部を集めた会議を開くのは重大なケースに限られる。県内の被害2店が取材に応じ、犯行の状況を詳細に明かした。
市川
閉店5分ほど前の9日午後6時56分ごろ。市川市東大和田の質店「かんてい局市川インター店」に男3人が入ってきた。30代の男性店員の証言によると、事件は次のように起きた。
閉店前、いつものように店内をモップで掃除をしていると、男3人が午後6時47分ごろ、白の軽自動車でやってきた。うち1人が店内に。2分ほど店内を見渡すと外に出た。
同56分ごろ、今度は3人で店内に。店員はこの時点で1人がハンマーを持っているのを確認した。店のスタッフは他に社長と店長。身の危険を感じて110番し、全員でスタッフルームに避難した。スタッフルームのマジックミラーと防犯カメラで息をひそめて様子をうかがった。
3人組はいったん店の外に出る。すると間もなくして、ハンマーと袋を持って2人が店に入ってきた。残る1人は入り口の自動ドア付近で見張っていた。
振り下ろされたハンマーでショーケースがたたき割られた。オメガやカルティエなどの高級腕時計約20本(計約460万円相当)は次々に袋へ。強奪時間はわずか40秒。「映画のような光景だった」。店員は今も驚きを隠せない。
この質店は市川署から約350メートル。警察署の近くで起きた大胆な犯行だった。
大網白里市
大網白里市駒込のリサイクルショップ「てんとう虫」に黒いパーカー姿の男が入ってきた。消火器と袋を持った白のパーカーの男が続いた。袋には粘着テープが入っていた。
12日午後7時25分ごろ、男2人は黒い車で店にやってきた。「金庫はどこだ」。店内を物色する男たちの怒声が響いた。
男たちは、店主の内藤政行さん(76)の顔面を革の手袋をした手で10発以上殴る。そして、持ってきた粘着テープを使って動けないように縛ろうとした。内藤さんは必死に抵抗し、顔に全治2週間のけがを負った。男たちは逃げる際、持ってきた消火器を噴射した。手慣れた犯行だった。
結局、男たちは何も奪うことなく、外に待機していた車で逃走した。
「閉店時間を延ばしてほしい」。男2人がやってくる1時間ほど前、内藤さんは男の声で電話を受けていた。本来は午後7時の閉店。犯行グループからの電話とみられる。
内藤さんは平成元年からリサイクルショップを始め、3年前から現在の場所で営業している。事件後、店の奥に入られないよう鍵付きの扉と壁を設置する防犯対策を行った。息子2人も県内でリサイクルショップを開いているといい、気の抜けない日が続く。