全国で相次ぐ強盗事件で昨年12月に東京都中野区の住宅で約3千万円が奪われた事件に関わった男が、特殊詐欺グループとの接点があることが27日、捜査関係者への取材で分かった。一連の強盗は、特殊詐欺グループの手口が応用され、資産や納税状況を調べた特殊な名簿を流用している疑いも判明。警察当局は、身柄の引き渡しを求めているフィリピンの入管施設に収容されている特殊詐欺グループが、強盗に犯行形態を変えた可能性もあるとみて調べを進めている。
捜査関係者によると、特殊詐欺グループとの接点が確認されたのは、中野事件で26日に逮捕された大古健太郎容疑者(33)=大阪府藤井寺市。認否を留保するなどしているが、携帯電話の解析や周辺捜査で特殊詐欺グループとの関与が浮上した。
中野事件では、これまで8人が関わったことが分かっており、大古容疑者は実行役ら7人を管理する立場だった。昨年10月に東京都稲城市で約3500万円が奪われた事件でも、大古容疑者は実行役の運転を担うなど、主導的立場だったとみられている。特殊詐欺でも、同様の役割を担っていた可能性がある。
一連の強盗事件では、実行役が「ルフィ」「キム」などと名乗る人物の指示を受けていたとされる。実行役は交流サイト(SNS)の闇バイトで募集され、ルフィら指示役が運転免許証と顔写真を送信させて個人情報を握った上でグループに引き入れていた。
個人情報の把握は、脱退を防ぐ狙いがあったとみられ、一連の強盗事件で警視庁に逮捕された男らは「逮捕されたときは黙秘する契約。話をすると粛清されるかもしれない」「自宅に知らない人が訪ねてきて組織の人だと恐怖を覚え『もう抜けられない』と思った」などと供述しているという。
警視庁は実際にグループの一員が引き入れた者の自宅を訪問し、居住状況や家族構成を調べていたことも確認。心理的恐怖を与え、次々と犯行を重ねさせていたとみている。
こうした実行役の募集・管理も特殊詐欺グループの手口と酷似。また、ルフィらと関連があるとみられる令和元年の特殊詐欺グループのフィリピンの架電拠点摘発では、ターゲットの名簿も見つかっている。警視庁は一連の強盗でも資産家らに関する特殊な名簿が使われたとみており、特殊詐欺グループが犯行形態を変え、強盗にシフトしたとみて調べを進めている。