仙台高裁の岡口基一(きいち)判事(56)=職務停止中=から交流サイト(SNS)で侮辱されたとして、東京都江戸川区の女子高校生殺害事件の遺族が計165万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は27日、一部の投稿について名誉毀損(きそん)を認め、岡口氏に計44万円の支払いを命じた。
提訴したのは平成27年に殺害された都立高3年の岩瀬加奈さん=当時(17)=の両親。
判決理由で清野正彦裁判長は「裁判官には国民の信頼を傷つけないよう慎重に行動すべき義務がある」とした上で、令和元年11月に岡口氏が行った「遺族は俺を非難するよう東京高裁事務局などに洗脳された」などとする投稿は「事実に反して人格を否定する侮辱的表現」だと認定した。
岡口氏は平成29年12月、「首を絞められて苦しむ女性の姿に性的興奮を覚える性癖を持った男」「そんな男に無惨にも殺されてしまった」とも投稿。これについては、文章の一部とほぼ同じ表現が事件の判決に使われたことなどから不法行為の成立は認めなかったが、「軽率のそしりを免れない」などと批判した。
投稿などを巡っては令和3年6月、国会の裁判官訴追委員会が岡口氏を訴追。罷免するかを決める弾劾裁判が続いている。
判決後に会見した女子高生の両親は「裁判官という職責の重さを考慮してもらえず残念」と話し、控訴を検討するとした。岡口氏はこの日、出廷せず、代理人は「判決を精査して対応を検討する」とのコメントを発表した。
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