ロシア検察当局は26日、バルト三国ラトビアに拠点を置く独立系露語オンラインメディア「メドゥーザ」を、露国内での活動を禁じる「望ましくない組織」に指定した。メドゥーザはプーチン政権の強権統治を批判し、ウクライナ侵略でも露政権が隠蔽する露軍の損害やウクライナ市民の被害などを伝えてきた。侵略の「戦果」が乏しい中、露政権は自身に不都合な情報を封殺し、国内に厭戦(えんせん)機運が高まる事態を防ぐ思惑だとみられる。
タス通信によると、露検察当局は、メドゥーザの活動が「露憲法秩序と国家の安全への脅威になると確認された」ため指定したと主張した。
露経済紙コメルサントによると、「望ましくない組織」の運営者や従業員には刑事罰や行政罰が科される。関係者でなくても、組織が作成した記事や資料を拡散したり、金銭的に支援したりした場合は刑事罰などの対象となる。
メドゥーザは露国内の協力者とともに取材や記事執筆をしているほか、スポンサーや読者からの寄付を運営費の柱にしているとされる。組織指定により、報道活動の継続や資金確保が困難になると予測される。
メドゥーザの記事を引用しただけでも罰則対象になるとされ、ロシアの言論状況のさらなる悪化は確実だ。
組織指定を受け、メドゥーザは26日、声明を発表。「記者や取材相手、寄付をしてくれる読者に害が及ぶことを恐れている」と懸念を示す一方、「私たちはロシアの民主化を信じている」とし、指定後も活動を続ける方法を模索する意向を表明した。複数の露ジャーナリストや人権団体からは指定を非難する声が上がった。
メドゥーザはプーチン政権による言論統制の強まりを危惧したロシア人記者らが2014年に設立。政権側の汚職や人権侵害を追及する調査報道で高い評価を得たほか、政権によるデモ弾圧や反体制派指導者ナワリヌイ氏の拘束などを非難する報道を展開してきた。
露政権は21年、メドゥーザをスパイと同義の「外国の代理人」に指定した。スポンサー離れを引き起こし、メドゥーザの資金状況を悪化させて活動停止に追い込もうとしたとの観測が強い。
さらに露政権はウクライナ侵略後、「虚偽情報」を拡散したとして、複数の他のリベラル派メディアとともにメドゥーザのウェブサイトへの接続を遮断。それでもメドゥーザは、規制を回避できる「VPNアプリ」の使用によるサイトの閲覧を読者に呼び掛けたほか、匿名性が高い通信アプリ「テレグラム」を使って侵略の実態を伝えてきた。
メドゥーザのテレグラムアカウントの登録者数は120万人超に上り、政権側に検閲されていない報道を求める露国民にとって貴重な情報源となってきた。
プーチン政権は近年、デモ規制の強化など言論統制を進めてきたが、ウクライナ侵略の開始後はさらに厳格化。政権や軍への批判を事実上禁止し、リベラル派メディアを相次いで活動停止に追い込んだ。