主張

電気料金値上げ 原発活用で負担軽減図れ

東京電力ホールディングス=東京都千代田区(鴨志田拓海撮影)
東京電力ホールディングス=東京都千代田区(鴨志田拓海撮影)

東京電力など大手電力各社が家庭向け規制料金の値上げを相次いで経済産業省に申請した。

政府の物価高対策で補助金が投入され、2月から電気料金は2割ほど下がる予定だが、値上げが認可されれば、今春以降に再び料金の負担は重くなる見通しだ。

各社の申請は世界的な燃料価格の高騰と円安を受けたものだ。各社とも輸入燃料の急激な価格上昇で財務基盤が悪化しており、コストの適正な料金転嫁はやむを得まい。

一方で複数の原発が稼働している関西電力と九州電力は今回、規制料金の値上げ申請を見送った。原発の発電コストの安さが改めて浮き彫りになった格好だ。

原発を広く活用することで家計や企業の負担を軽減するだけでなく、電力の安定供給や脱炭素化にもつなげる必要がある。

東電は6月以降の家庭向け規制料金について、約3割の値上げを申請した。同社が規制料金の値上げを申請するのは東日本大震災後の平成24年以来、11年ぶりだ。北海道電力も26日、6月から約3割の規制料金値上げを申請した。

すでに東北、北陸、中国、四国、沖縄の5電力も値上げ申請を終え、審査が始まっている。これらの各電力は4月から規制料金を28~45%引き上げることを目指している。燃料コストや経営効率化などについて、厳正かつ迅速な審査が欠かせないのは当然だ。

こうした値上げ申請は、沖縄を除いて原発の一部再稼働を織り込んでいる。東電も柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)について、今年10月から再来年春にかけての再稼働を前提に料金を算定した。燃料費の転嫁分を削減し、値上げ幅を抑制するためだ。

このため、原発が再稼働しなければ、その分だけ燃料コストが上がり、再値上げなどを余儀なくされる可能性もある。安全対策を徹底したうえで原発の再稼働を進め、家計の負担を極力抑えることが肝要である。

日本列島には強い寒気が流れ込み、暖房用の電力需要も急増している。電力供給の余裕度を示す予備率は、原発が1基も稼働していない東日本を中心に低水準にとどまり、電力需給が逼迫(ひっぱく)する懸念もある。もし大規模停電が起きれば、深刻な被害が出かねない。原発の早期再稼働で電力の安定供給も確保しなければならない。

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