岸田文雄首相が掲げた「次元の異なる少子化対策」をめぐり、与野党で児童手当の拡充に関する議論が熱を帯びている。自民党の茂木敏充幹事長が25日の国会質問で児童手当の所得制限撤廃を主張。野党は、給付の絞り込みを進めてきた与党の「変節」を指摘しつつ、さらなる支援拡充を求める。春の統一地方選に向けたアピール合戦の側面もありそうだ。
茂木氏は25日の衆院本会議で「すべての子供の育ちを支える観点から、所得制限を撤廃すべきだ。多子世帯への加算も前向きに検討すべきだ」と明言。野党各党が求める「N分N乗方式」(家族の人数が増えるほど減税される課税方式)にも言及し、支援の拡充を求めた。
自民は、旧民主党政権による所得制限のない「子ども手当」導入を「バラマキ」と批判した経緯がある。茂木氏は、こうした過去を記者団に問われ「必要な政策は常に見直していかなければいけない」と述べた。公明党の石井啓一幹事長も26日、記者団に「私どもと軌を一にするところだ。しっかり取り組みたい」と同調した。
一方、旧民主の系譜をひく立憲民主党の反応は複雑だ。旧民主は当時の政権公約で子供1人当たり月2万6千円の支給を打ち出したものの財源を確保できず、平成22年度から同1万3千円の支給でスタート。さらに東日本大震災の復興財源確保を優先することも踏まえ、自民、公明との協議の末、24年度から「子ども手当」開始前にあった所得制限を復活させた。
立民の長妻昭政調会長は26日の記者会見で、茂木氏の発言を「いい変節だと歓迎はするが、過去の自民が少子化対策にブレーキをかけた反省と総括を、ぜひしていただきたい」と強調。さらなる措置として、高校生までの対象拡充を「最優先課題」と位置付けた。
国民民主党は昨年、児童手当の所得制限撤廃の法案を国会に提出している。玉木雄一郎代表は26日の衆院本会議で「賃上げと所得制限撤廃は同時に実現すべき政策だ」と強調し、教育無償化の財源としての「教育国債」導入などを求めた。
日本維新の会は地盤の大阪府市政で子育て支援に取り組み、春の知事選・市長選公約には「0歳から大学院卒業までの」所得制限のない教育無償化を掲げた。
馬場伸幸代表は26日の衆院本会議で「大阪で進む『異次元の少子化対策』に同調し、全国に広げていくつもりはないか」と述べ、保育や幼児教育なども所得制限のない無償化を進めるよう首相に迫った。児童手当の所得制限撤廃については、記者会見で「方向性は合っている」と述べた。
立民・泉代表、茂木氏を批判「急に言い始めた」 児童手当の所得制限撤廃