岸田文雄首相は、昨年、安倍晋三元首相が凶弾に斃れた後、旧統一教会の問題でつまずき支持率が急落した。それ以来何をしても支持率は回復しない。12月には防衛費倍増、反撃能力保有を盛り込んだ安全保障関連3文書の閣議決定という国防政策の歴史的成果をあげているにもかかわらず、だ。それはなぜか。岸田首相の本質が、相変わらず戦後の、頭かくして尻隠さずの観念的な平和主義にとらわれており、その危うさを国民が見透かしているからではないか。
頭隠して尻隠さずの観念的な平和主義とは何か。それは武器を放棄すれば戦争はなくなるという幼児並みの理想主義と、その理想を抱きつつも現実には 日本は武器を持った米国に守ってもらえばいいという米国まかせの主体性なきご都合主義である。
岸田首相の観念的平和主義は核廃絶にこだわる姿勢に最もよく現れている。いうまでもなく、日本は世界で唯一の被爆国であり、核の脅威には世界一、敏感な国柄であるが、しかし、だからこそ首相たるものは、核兵器保有国は核を手放そうとしないという現実に対しては、リアリズムに徹した態度をとっていなければならない。にもかかわらず、岸田首相の核廃絶への考え方はあまりに観念的で現実に合っていないのだ。