今年のNHK大河ドラマ「どうする家康」。松本潤さん演じる若き日の徳川家康は優柔不断で弱々しく、家臣を置いて逃げもする。後年、狸(たぬき)親父と呼ばれた狡猾(こうかつ)さなど微塵(みじん)もない
▶早大非常勤講師の大場一央(かずお)氏は昨夏まで本紙夕刊に連載した「日本の道統」で、家康の人生の特徴を「徹底した不遇」と書いた。優秀で勤勉だったから着々と力をつけ事業を拡大するが、軌道に乗ったのを待ち受けるように嫌がらせのような不運が襲う。次第に口数が少なくなり、何を考えているか分からないといわれた。狸親父の評価は、仕事を黙々とこなし、終わったら、さも当然と引き下がるつき合いの悪さへの中傷なのだ
▶確かに、人質生活の後も、三河一向一揆で多くの家臣と対立。武田信玄に大敗北を喫し、本能寺の変では明智光秀から追われた。昨年の「鎌倉殿の13人」のように、時とともに主人公が変貌していくのか。新たな家康像を打ち立てるか。見どころの一つだろう。