富雄丸山古墳 盾形銅鏡、鮮やかな文様浮かび上がるか

富雄丸山古墳の「造り出し」から見つかった埋葬施設=奈良市(沢野貴信撮影)
富雄丸山古墳の「造り出し」から見つかった埋葬施設=奈良市(沢野貴信撮影)

前例のない「鼉龍(だりゅう)文盾形銅鏡」と「蛇行(だこう)剣」が出土した奈良市の富雄丸山(とみおまるやま)古墳。盾形銅鏡は被葬者を納めた埋葬施設「粘土槨(かく)」に埋め込まれ、表面は粘土で覆われて模様もほとんど見えない。奈良県立橿原考古学研究所で保存処理作業が行われ、粘土を取り除けば鮮やかな文様が浮かび上がる可能性がある。保存処理や調査が進むことで「国宝級」とされる金属工芸の謎に迫る成果が期待される。

同研究所ではこれまで、古墳出土の銅鏡などについて3次元レーザー測量を実施。邪馬台国(やまたいこく)の女王・卑弥呼(ひみこ)が中国王朝から譲られたともいわれる三角縁神獣鏡(さんかくぶちしんじゅうきょう)をはじめ、古墳時代の銅鏡の精緻な文様構成などを分析し、さまざまな成果を上げている。

今回の盾形銅鏡についても、文様の詳細な構成や他の古墳で出土した鏡との比較ができれば、どのような方法で作られたかルーツに迫る成果も期待される。一方、長さ237センチの国内最大の鉄剣はすでにX線撮影が行われ、剣身が曲がりくねった状態を確認。さらに粘土を除去するなどして観察し、詳細を調べる。

岡林孝作副所長は「応急処置をしながら材質や付着物などのデータをとる。国宝になってもおかしくない遺物を守ることを最優先したい」と話している。

富雄丸山古墳から見つかった盾形銅鏡(左)。透過X線画像では精緻な文様が施されているのが分かる(奈良県立橿原考古学研究所提供)
富雄丸山古墳から見つかった盾形銅鏡(左)。透過X線画像では精緻な文様が施されているのが分かる(奈良県立橿原考古学研究所提供)

発掘現場の公開は28日午後0時半~3時と29日午前10時~午後3時。盾形銅鏡などが見つかった粘土槨を中心に見学できる。盾形銅鏡と蛇行剣は保存処理中のため、公開されない。

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