金正恩氏「中国人は嘘つき」「在韓米軍は中国牽制に必要」 米前国務長官が証言

朝鮮労働党中央委員会拡大総会で演説する金正恩党総書記=2022年12月28日、平壌(朝鮮中央通信=共同)
朝鮮労働党中央委員会拡大総会で演説する金正恩党総書記=2022年12月28日、平壌(朝鮮中央通信=共同)

【ソウル=時吉達也】北朝鮮の非核化に向けた2018年の米朝交渉当時、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長(現・総書記)が在韓米軍について「中国を牽制(けんせい)するために必要だ」とする趣旨の発言をしていたことが明らかになった。米国のポンペオ前国務長官が、24日に出版した回顧録に当時のやり取りを記載した。

北朝鮮はこれまで、米韓軍事演習への対抗措置としてミサイル発射を繰り返すなど、在韓米軍への敵意をあらわにしてきた。ポンペオ氏の証言からは、表向きには中国との友好関係を強調しつつ、2大国間で「バランス外交」を図る北朝鮮の思惑が浮かびあがった。

米中央情報局(CIA)長官だったポンペオ氏は18年春、当時のトランプ大統領の特使として極秘に訪朝、正恩氏と面会した。回顧録によると、ポンペオ氏が「中国は以前から『米軍が韓国から撤収すれば正恩氏が喜ぶ』と話している」と述べたところ、正恩氏は「中国人は噓つきだ」と反論。「中国は、朝鮮半島をチベットやウイグルのように扱えるよう、米国を撤収させたがっている」と指摘した上で、中国の半島進出を防ぐため米軍の駐留が必要だと述べたという。

在韓米軍をめぐっては、正恩氏の父、金正日(ジョンイル)総書記も「南北統一後も、地域の勢力均衡のため在韓米軍が必要だ」との認識を示し、00年の南北首脳会談で韓国側に伝えたと、複数の韓国元高官が証言している。

回顧録では、正恩氏が「ずっと私を殺そうとしてきたのを知っている」と米国の〝暗殺計画〟に触れ、ポンペオ氏が「今もそうですよ」と軽口をたたいたエピソードも紹介。トランプ氏がSNS(交流サイト)を通じ正恩氏を「リトル・ロケットマン」と揶揄(やゆ)したことについて、正恩氏も「ロケットマンはいいがリトルはよくない」と冗談を言ったという。

ポンペオ氏は、19年6月に軍事境界線の板門店で行われた3回目の米朝首脳会談にも言及。現地では会談の前後に韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領(当時)が加わり3人で立ち話をする形式がとられたが、事前協議では北朝鮮が文氏の関与を拒む一方、文氏はポンペオ氏に数回直接電話をかけ、同席を求めたという。ポンペオ氏は、正恩氏が「文氏に割く時間も、敬意も持たなかった」と振り返った。

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