デジタルネーチャー化する世界で研究と創作 大阪・関西万博の落合陽一プロデューサー

デジタルネーチャー化する世界で研究と創作を続ける筆者(©中川容邦/KADOKAWA)
デジタルネーチャー化する世界で研究と創作を続ける筆者(©中川容邦/KADOKAWA)

2023年、計算機自然(デジタルネーチャー)化が日々進んでいます。われわれが過ごしてきた元来の自然は更新されつつあり、計算機であふれた自然はAI(人工知能)の高度化とともにわれわれの住むこの世界を常に更新し続けています。

この劇的な変化は人間の能力が拡張されるというより、人智を超えた環境が整いつつあり、それは自然の中で過ごすわれわれにとってはもはや新たなる自然であるとしかいいようがない状況に見えます。プログラムを書くためのAIは多く生まれ、絵も音楽も動画も立体物もある程度の精度で、そしてどんな人間でも容易に創作できるようになりました。

スマートフォンが生み出したのがオーディオビジュアルの民主化だったのなら、今起こりつつある変化は頭脳労働や創作行為の民主化が生まれつつあります。今まで職人的に行われてきた頭脳労働はAIによってより一部のAIに適合した人々によって圧倒的な速さで行うことができるようになっている状態と、誰でも確率的にある一定のクオリティーが生み出されていくことの2つに分かれています。スマホ以降写真が誰でも撮れるようになったように、頭脳労働も誰でもできるようになり、そして一部の人々だけが数百人分の頭脳労働を1人でこなせるようになりつつあります。

自分が18年に「デジタルネイチャー」という本の中で「AIvsBI」という構図を提示したとき、それは加速主義的に受け取られた側面があり、私の意図とは異なった受け入れられ方をしましたが、今生み出されつつある構図は予見していた通りに、直角的に進化する技術生態系を知覚している人々とそうでない人々が共存しており、低速の社会制度変化が技術進化への抵抗弁として機能している状況です。この世界に対して、人をより進化させる方法を考えていくとき、私は25年に向けてデジタルヒューマン(人間のデジタル化)をより社会インフラとして強靭(きょうじん)化し、デジタルネーチャーへの本質的な理解を社会にもたらすことが必要だと考えています。

25年、万博の頃にはその2つが結実したパビリオンをみなさまにお見せすることができることを信じて、日々デジタルネーチャー化する世界で研究と創作を続けていこうと思います。その決意を持って23年の年頭のごあいさつとさせていただきます。(大阪・関西万博テーマ事業プロデューサー 落合陽一)

おちあい・よういち 1987年生まれ。東京大大学院学際情報学府博士課程修了。筑波大デジタルネイチャー開発研究センター長、准教授。ピクシーダストテクノロジーズ代表取締役。

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