ソニー「浮くスピーカー」でアスリートの伴走者に 耳を塞がないヘッドホン「フロートラン」発売

ソニーのオフイヤーヘッドホン「Float Run(フロートラン)」の装着イメージ。耳の前で浮いたイヤホンから音楽などが聞ける(同社提供)
ソニーのオフイヤーヘッドホン「Float Run(フロートラン)」の装着イメージ。耳の前で浮いたイヤホンから音楽などが聞ける(同社提供)

ソニーは、耳の前に浮いたスピーカーから音楽などが流れるオフイヤーヘッドホン「Float Run(フロートラン)」を2月3日に発売する。耳を塞がないためランニング中も快適で、音楽などを楽しみながら周囲の音を聞いたり、会話することもできる。ソニーが得意とする音響技術でアスリートや市民ランナーに寄り添い、実力を発揮できるか注目される。

快適な装着感と高音質で商品化

フロートランは、ソニーが2021年に米クラウドファンディングサイト「Indiegogo(インディゴーゴー)」で公開。ランニング時にも快適な装着感と高音質を実現すると高く評価され、商品化に至った。市場推定価格は2万円前後だ。

ソニーのオフイヤーヘッドホン「Float Run(フロートラン)」(同社提供)
ソニーのオフイヤーヘッドホン「Float Run(フロートラン)」(同社提供)

左右のイヤホンをネックバンドで接続し、イヤーハンガーと呼ばれる部分を耳にかけて装着。耳や頭部などの多様な身体データーを設計に生かし、激しく動いても落下する心配がない。

スピーカーが耳の前に浮く仕組みとなっており、圧迫感や振動がなく、音楽を聞いていても違和感や疲れは少ない。重さは約33グラムで、使用時のストレスを軽減する。満員電車のような密な空間ではなく、ランニングなど屋外での使用を主に想定。それでもスピーカーを限りなく耳に近くなるように設計して音漏れがしにくい構造になっている。

ソニーのオフイヤーヘッドホン「Float Run(フロートラン)」の装着イメージ。ランニング中でも快適に使用できる(同社提供)
ソニーのオフイヤーヘッドホン「Float Run(フロートラン)」の装着イメージ。ランニング中でも快適に使用できる(同社提供)

スマートフォンと無線でつながり、本体のボタンを操作して音楽の再生や停止、音量調整などを行う。フル充電で最大約10時間の連続再生が可能だ。低音域から高音域までバランスよく、クリアな音質を楽しめる。

頭の後ろ側のネックバンドの位置は低めに設計され、髪型や帽子、サングラスなどの邪魔にならないように配慮されている。

拡大する世界市場、スポーツ用途で選択肢を

煩わしいコードが不要で高音質で音楽などが楽しめるワイヤレスイヤホン・ヘッドホンは、米アップルが16年に発売した「AirPods(エアポッズ)」のヒットをきっかけに普及が進む。

ソニーのワイヤレスイヤホン「LinkBuds(リンクバッズ) S」(同社提供)
ソニーのワイヤレスイヤホン「LinkBuds(リンクバッズ) S」(同社提供)

ソニーも、外部の騒音を打ち消して音声を聞きやすくするノイズキャンセリング機能などを搭載した「1000X」や「LinkBuds(リンクバッズ)」のシリーズを展開している。

音質の改善や電池性能の向上が進むほか、新型コロナウイルス禍でリモートワークなどが普及したことも追い風となり、市場規模は拡大。調査会社の富士キメラ総研(東京)は、27年の世界市場規模が21年比77・0%増の6億3000万台に成長すると予測する。

ソニーはフロートランの投入で「スポーツ用途のヘッドホンの選択肢が広がることを期待する」としている。

陸上・桐生選手「外さないで練習の気持ちアップ」

練習時や試合前に音楽を聞いて、テンションを高めるアスリートは多い。

00年のシドニー五輪女子マラソンで金メダルを獲得した高橋尚子さんが携帯プレーヤーで歌手のhitomiさんの「LOVE2000」を聞いていたという逸話は今も語り継がれている。

桐生祥秀選手
桐生祥秀選手

陸上100メートルで日本人史上初の9秒台を達成した桐生祥秀選手(日本生命)も、人気男性デュオ・ゆずの「栄光の架橋」などを愛聴する音楽好きで知られる。

フロートランを装着してランニングを体験した桐生選手は、ソニーが特設サイトで公開しているインタビュー動画で「音楽を聞きながらコーチや仲間と会話できるので、止めたり外したりする動作を減らすことができる」とメリットを指摘。「外さないで自分の音楽が聞けて練習の気持ちのアップになります」と感想を語っている。

サッカーW杯では映像認識技術が日本の「救世主」に

昨年のサッカーワールドカップ(W杯)カタール大会は、ソニーの名を世界中に再認識させるきっかけとなった。

日本のグループリーグのスペイン戦で三笘薫選手がゴールラインぎりぎりから放ち、「1ミリの奇跡」と称賛された決勝アシストの瞬間を、審判員補助システム「ビデオ・アシスタントレフェリー(VAR)」がはっきりと捉えていた。

VARのシステムを説明する担当者=2022年11月、ドーハ(共同)
VARのシステムを説明する担当者=2022年11月、ドーハ(共同)

VARには、ソニーグループ傘下の英ホークアイ・イノベーションズの映像認識技術が大きく貢献。日本の決勝ゴールを認めない誤判定を防ぐ「救世主」となった。

アスリートが晴れ舞台で勝利をつかめるかは、日頃の地道な練習にかかっている。フロートランは頼もしい「伴走者」になれるか。ソニーの実力が試される。(宇野貴文)


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