ヘルメットから戦車の供与へ ドイツ、難産の軍事支援

軍事演習で砲弾を発射するポーランド軍のレオパルト2PL=2022年5月、ポーランド北東部(ロイター)
軍事演習で砲弾を発射するポーランド軍のレオパルト2PL=2022年5月、ポーランド北東部(ロイター)

【パリ=三井美奈】ドイツが主力戦車「レオパルト2」のウクライナ供与を決めたことは、武器提供の目的がロシア軍に侵略されるウクライナの自衛にとどまらず、占領地奪回を目指す攻撃支援にシフトしたことの象徴となる。ドイツには反戦平和主義が浸透し、軍事支援に慎重だったが、外圧で変化を迫られた。

レオパルト2は「世界最強の戦車」の一つにあげられ、乗員を対戦車砲や地雷の攻撃から守る防御力に優れる。時速約70キロで走行でき、機動力も高い。製造国ドイツが輸出承認に踏み切れば、ウクライナは欧州各国から大量の供与が期待できるだけでなく、機種一本化で砲弾や部品補給も容易になる。英国際戦略研究所(IISS)は戦況に大きな効果をもたらすには、約100両必要だという分析を示した。

戦車供与をめぐり、ドイツでは「戦闘をあおる」との懸念が強かった。先週の世論調査では、賛成46%、反対43%と拮抗(きっこう)した。フランス戦略研究財団のオリビエ・ケンプ研究員は「ドイツには第二次大戦の記憶が残る。自国の戦車が進軍の先頭を走るのを見たくないのだ。ウクライナは、かつての独ソ戦の戦場でもある」と指摘する。ロシアが核兵器使用をほのめかしていることも不安の背景にある。

プーチン露大統領は「非ナチス化」を侵攻の口実としており、レオパルト2がロシア軍の手に落ちれば、格好の宣伝材料になる。

ドイツは長く「紛争地に殺傷兵器を送らない」を原則としてきた。露軍の侵攻直前、軍事支援は「自衛用に限る」としてヘルメット5千個を送ると表明し、ウクライナの失望を買った。その後、米英に追随して自走砲や防空システム提供を決めたが、ショルツ独首相は常に慎重な姿勢を貫いた。

今回は春にも露軍の大攻勢が予想される中、ウクライナのほかポーランドや英国が、20日のウクライナ支援国会合でドイツに決断を迫った。ドイツは「同盟国と連携する」と繰り返し、米国と歩調を合わせたい構えを崩さなかった。煮え切らない態度に「ショルツする」という造語が広がった。「前向きな姿勢を示しながら、動かない口実を探す」という意味だ。

ドイツ連立政権内の対立もあらわになった。ショルツ氏の中道左派与党、社会民主党(SPD)はもともと親ロシア路線をとり、戦車供与に消極論が強かった。第2与党「緑の党」、第3与党「自由民主党」は前向きだった。

ポーランドが支援国会合を前に、保有するレオパルト2の供与意欲を示した際、緑の党のベーアボック外相は「ドイツは妨害しない」と表明した。SPDのピストリウス国防相は「決めるのは首相」と述べ、外相発言を牽制(けんせい)した。

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