主張

JAXA実験不正 組織の徹底検証が必要だ

宇宙航空研究開発機構(JAXA)が平成28~29年に実施した医学系実験で捏造(ねつぞう)などの不正があった問題で、研究実施責任者を務めた古川聡宇宙飛行士が戒告の懲戒処分を受けた。

宇宙飛行士は子供たちのあこがれの対象だ。古川氏は実験不正に直接関与していないとはいえ、現役の宇宙飛行士が懲戒処分を受ける事態は残念でならない。

JAXAは日本の宇宙開発の中核であり、科学技術を牽引(けんいん)すべき組織でもある。宇宙開発、科学技術への期待と信頼を裏切る重大な問題である。

不正があったのは、宇宙基地のような閉鎖空間での長期滞在によるストレスを把握する実験で、平成28~29年に実施された。研究者2人が、データを書き換えたり存在しないはずのデータを作ったりしていた。

JAXAは、第5回試験(29年11月)で起きた検体の取り違えをきっかけに内部調査で問題を把握し、令和元年11月に理事長判断で研究を打ち切った。1億9千万円もの公的な研究費が使われた。JAXAとしての論文発表には至らず、成果はなかった。

昨年11月にJAXAが文部科学省に提出した報告書には、研究倫理の欠如だけにとどまらない、多くの問題点が挙げられている。

大きな問題の一つは、事前審査で2度不承認になった実験計画が科学的妥当性が確認されないまま実施されたことだ。改竄(かいざん)や捏造以前の極めて杜撰(ずさん)な実態は、信じがたいほどである。

また、同時期に実施された医学系研究17件を対象とした自主点検では、改竄が疑われるような事例はなかったものの、データ保管や研究ノートの記載に不適切なものが「幅広く散見された」と報告されている。不正の種はあちこちに埋まっているのだ。

これらはJAXAが文科省に報告した問題点の一部である。医学系実験以外の研究開発、管理部門に同様の杜撰さやゆるみ、不正の種が潜んではいないか。全組織を対象とした検証が必要だ。

データ改竄や捏造を完全に防ぐのは非常に難しい。だが、不正の種が育ち難く小さな芽のうちに摘み取られる組織の風土は醸成できるはずだ。宇宙開発への信頼を取り戻し、子供たちの夢を守るために、一過性ではない取り組みが不可欠である。

会員限定記事会員サービス詳細