(月刊「丸」・昭和49年12月号収載)
昭和十六年十二月八日、伊号第二六潜水艦は、太平洋上で米陸軍輸送船シンシア・オルソン号を砲撃。乗組員はボートで逃れ、敵船は炎上した。艦長の話では、本艦が砲撃を開始したころ、わが空母機群がパールハーバーのアメリカ艦隊にたいし、大空襲を敢行しているという。
また、潜水艦部隊もハワイ周辺において作戦を展開中であり、極東はもちろん太平洋の西南方面では、全兵力をあげて戦闘中であることが艦内につたわっていった。
また、われわれが米船を攻撃中に、電信室より「トラ」連送を傍受したという報告があったが、これがハワイ空襲部隊の「ワレ奇襲ニ成功セリ」の暗号電文であることは、のちになって知った。
やがて食事もおわり、しばらくしてから艦長が潜望鏡で海上を観測すると、敵船はなおも傾斜したままの姿で浮いているという。艦長はふたたび砲撃を決意し、艦内へ「急速浮上、砲戦用意」を指令した。見張員に対しても、飛行機に十分注意するようにとの達しがある。砲術長なぞは、急速浮上砲戦のまたとない訓練であると、大張り切りである。