「幸せな家族はどれもみな同じようにみえるが、不幸な家族にはそれぞれの不幸の形がある」と定義して始まるトルストイの『アンナ・カレーニナ』。不朽の名作だが、さすがにこの部分は古びてしまったと、僭越(せんえつ)ながら思う。現代では、幸せな家族はどれも同じようだとはいえず、それぞれの幸せの形があるようにみえる
▶いわゆる伝統的な家族の形に近づくことが、幸せへの主要ルートだった時代ではなくなった。どのような形、構成の家族にも、いらぬ苦労を背負い込ませない、というのが春から少子化対策を担う「こども家庭庁」の主要なミッションになるのだろう。柔軟性ときめ細かさが求められる
▶留意すべきは「社会が経済変化に晒(さら)されるやいなや、それに応じて家族も変化する」(ジェイン・ジェイコブズ『市場の倫理 統治の論理』)こと。大多数の家族の経済的な基盤は企業や店にある。経営者も少子化対策の責任の一端を負っているのだ。