社説検証

中国ゼロコロナ撤廃 産経「素早い水際は当然」 情報の隠蔽が最大の失敗

中国の春節(旧正月)に合わせ、長崎市で始まった「長崎ランタンフェスティバル」 =22日夕
中国の春節(旧正月)に合わせ、長崎市で始まった「長崎ランタンフェスティバル」 =22日夕

中国の習近平政権が、新型コロナウイルスの感染者は一人も見逃さないという「ゼロコロナ政策」を事実上、撤廃した。直後から新規感染者数は急増し、日本など周辺国は水際対策の強化など、対応に追われている。世界経済の回復に直接かかわる重大事だ。習政権の看板政策の突然の変更に世界はまたも翻弄されるのか。

「厳しい行動制限を課すゼロコロナ政策が社会の反発を招いたとみるや、一転して制限を緩和したら感染の急拡大を招いた――。これがいま中国で起きていることだ。…なぜ緩和が今なのかが不明で、感染情報の公開も全く足りない」と朝日は厳しく断じた。「深刻なのは、情報が十分に公開されていないことだ。衛生当局の発表で大半の日は新規感染者が数千人、死者ゼロというのは、不自然に過ぎる」とクビを傾(かし)げた。

「中国は約3年前に武漢で感染爆発が起きた際、情報を隠蔽(いんぺい)し、行動制限などが遅れた」「同じ過ちを繰り返す恐れがある。正確な感染情報の共有は各国共通の責務だ」と読売も対応を批判した。産経は「中国で新型コロナウイルスの感染が急拡大する中で、日本が水際対策を強化するのは当然だ。感染症対策はスピードが勝負だ。昨年末、岸田文雄政権がいち早く、中国本土からの全ての入国者の空港検査を決めたことは妥当である」と政府の素早い対応を評価し、「正常な人的往来は感染症などの情報が公開され、共有されているという信頼なしには成り立たない。世界保健機関(WHO)も中国政府のコロナ情報の提供のあり方に疑問を呈している」と論じた。

産経はまた、「日本や韓国などが水際対策を強化したのは、中国での感染拡大だけが理由ではない。…中国は感染者や死者数でさえ過少に発表するなど各国に不信感が強まっているからだ」と指摘した。ところが中国は、日韓による中国への水際対策は「差別的」と反発し、日韓両国民へのビザ発給を停止した。産経は、習主席は新年を迎えるテレビ演説で新型コロナ対策について、『われわれは未曽有の困難に打ち勝った』と強調したことも紹介している。

中国の「ゼロコロナ政策」については、その厳しい防疫措置に、暴動や抗議デモなどの形で民衆の不満が噴出し、それが、SNS上などで世界中に拡散したのも特徴である。昨年11月中旬、広州市などで抗議デモが発生し、25日には新疆(しんきょう)ウイグル自治区ウルムチ市でデモが確認された。その後、上海、北京、武漢、成都各市などに飛び火し、全土に拡大した。上海市の抗議デモでは、SNS上で市民と警官隊が衝突する映像が拡散。市民らが『共産党退陣、習近平は下野を』などと連呼し、政権への不満を表明した。言論の自由抑圧を批判する声もあった。

だが、政府は実態を反映した全国データを発表しなくなった。一部の地方当局が感染者数などの「推計」を発表していたが、発表は習氏の看板政策の失敗を認めることにつながりかねないからだろう。新型コロナウイルス発生から3年間で、将来に向けいったいどれほどの有意なデータを集められたのか。習氏の政治的権威を高めるため、感染症鎮圧の先頭に立つ姿を演出しただけではなかったか。

重要なのは、政権の権威や面子(めんつ)ではなく、人々の命と健康である。中国自身の説明不足や不十分な情報公開を棚に上げ、日韓などに対し、一方的な対抗措置をとるのは筋違いだ。いまは政治的な駆け引きをもてあそんでいる場合ではないはずだ。新型コロナのデータを検討、検証し、対策に生かすため、各国・地域が協力すべきだ。(内畠嗣雅)

■中国ゼロコロナ終焉(しゅうえん)をめぐる主な社説

【産経】

・「中国の流行」持ち込むな (1月6日付)

・《中国ビザ発給停止》厳しい対抗措置が必要だ (1月13日付)

【朝日】

・情報公開と対策 両輪で (昨年12月28日付)

・《中国ビザ停止》不毛な対抗やめ協調を (1月12日付)

【毎日】

・感染爆発する中国 透明性の欠如が不信招く (1月11日付)

【読売】

・感染放置では混乱の拡大招く (1月11日付)

【日経】

・中国は深刻なコロナ感染実態の開示を (1月7日付)

・中国は日韓へのビザ発給停止を撤回せよ (1月13日付)

【東京】

・政権批判の兆候を見よ (昨年11月30日付)

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