海底に眠る戦争遺跡が語る「先の大戦」 靖国神社遊就館で「海鳴りのかなた」開催中 海中写真家、戸村裕行氏が協力参加

特別展「海鳴りのかなた」に展示されている海底写真に見入る水中写真家、戸村裕行さん(左)と靖国神社遊就館展示課の林紀孝課長=東京都千代田区九段北の靖国神社遊就館
特別展「海鳴りのかなた」に展示されている海底写真に見入る水中写真家、戸村裕行さん(左)と靖国神社遊就館展示課の林紀孝課長=東京都千代田区九段北の靖国神社遊就館

月刊「丸」と産経ニュースで連載中の「海底のレクイエム」の著者で水中写真家、戸村裕行さんが協力参加している特別展「海鳴りのかなた 波間より現れる戦中の記憶」が、靖国神社遊就館で開催されている。「海」と「最期の瞬間(とき)」を基軸に先の大戦で国や家族のために戦った先人たちの歴史に迫る企画展で、会場には南太平洋マリアナ諸島やソロモン諸島などの海で散った旧日本兵の日記や遺品とともに、撃沈されて海底に眠る輸送船や戦闘機など、戸村さんが撮影した数々の水中写真も展示。今では穏やかな南洋の海が、かつては激戦の舞台だったことを思い起こさせてくれる。

特別展「海鳴りのかなた」はミッドウェー作戦から80年目となる昨年3月からスタート。戸村さんの水中写真は特別展会場の入口に展示されており、シルト(沈泥)に覆われ、朽ち果てつつある海底戦跡の数々の写真が、来場者の思いを現在からあの戦争の時代へ、いざなってくれる。

ミクロネシアの海底に眠る特設運送船「伯耆丸」を撮影した複数の水中写真は、1944(昭和19)年2月のトラック島大空襲で撃沈された際の戦闘の激しさを物語るだけでなく、船倉に収納されたままの多様な車両から南洋の最前線の部隊が相応に機械化され、各種車両が装備されていたことを思い浮かばせる。

さらに特設潜水母艦「平安丸」や駆逐艦「菊月」などの海底戦跡に加え、沈没船の船室内にあった将棋の駒やビタミン剤の瓶、カレンダーなどの水中写真も展示、南洋で散っていった先人たちの生活の息吹を感じることもできる。「沈没船の船室に潜り、積もった沈泥を除いてみると乗組員たちのふつうの生活が現れるんです」と戸村さん。

会場には海で亡くなった日本兵の日記も展示。電信工事の免許をもつ海軍上等兵の日記には陸上勤務で電柱工事をしていたときに偶然、山本五十六海軍大将を見かけて感激した様子が記されていたり、闘病中の若い兵士が「早く原隊に復帰して、お国のために尽くしたい」と焦燥感をつづった記述もある。靖国神社遊就館展示課の林紀孝課長は「日記からはこの時代の先人たちの素直な気持ちが浮かび上がります」と語る。

特別展では、昭和15年の紀元2600年を奉祝して作られ、現在も全国の神社で舞われている神楽舞「浦安舞」が「海」に由来して成立したことや、日本近海や南洋で撃沈された戦艦や輸送船などを時系列に地図に示し、刻々と変わっていく戦況を示したパネルも紹介されている。「戦前の平和な日常から先の大戦へと向かう緊張した情勢、任務をまっとうして最期を迎えるその瞬間まで、時代の流れを追って先人たちのお気持ちをたどってもらえれば」と林課長。12月3日まで。

特別展「海鳴りのかなた」に展示されている海底写真に見入る水中写真家、戸村裕行さん(左)と靖国神社遊就館展示課の林紀孝課長=東京都千代田区九段北の靖国神社遊就館
特別展「海鳴りのかなた」に展示されている海底写真に見入る水中写真家、戸村裕行さん(左)と靖国神社遊就館展示課の林紀孝課長=東京都千代田区九段北の靖国神社遊就館

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