イソップ寓話(ぐうわ)にコウモリが印象的に登場する一編がある。命の危機に直面したコウモリが「自分はネズミだ」「鳥だ」などと述べ、場面に応じて立場を使い分ける話だ。このコウモリの姿勢が、どの陣営に対してもいい顔をする「コウモリ外交」という言葉を生んだとされる。
昨年6月に大統領に就任したフィリピンのマルコス大統領は良く言えば「バランス外交」、率直に言えばコウモリさながらの全方位外交を展開している。1月3~5日に中国を訪問したマルコス氏は「訪問を通じ、両国関係が非常に良好であることを世界に証明したい」と関係深化に意欲を見せた。日程終了時には中国側から228億ドル(約3兆円)の投資の約束を取り付けたと成果を誇示した。
こうしたマルコス氏の意向を中国側も敏感に察する。習近平国家主席は中比首脳会談で、マルコス氏の父で、独裁体制を敷いたマルコス元大統領期の1975年に両国の国交が樹立されたことに触れ、「あなたとあなたの家族は常に中国との友好を促進している」と述べた。父を崇拝し、父政権期を「黄金時代」と位置付けて美化するマルコス氏を巧みに称揚した形だ。