昨秋、政府が発表した文化功労者のなかに、オールドテニスファンにとって懐かしい名前があった。日本の女子プロ選手第1号の吉田(旧姓・沢松)和子さんである。国内では無敵の192連勝という大記録を樹立した。1975年のウィンブルドン選手権女子ダブルスで、日本女子初の四大大会優勝を飾っている。
▼元女王のテニス界への貢献は、輝かしい戦績だけではない。引退後は夫君が千葉県柏市に創設した「吉田記念テニス研修センター」(TTC)で、車いすテニスの普及に取り組んできた。
▼近くに住む少年は、小学2年から始めた野球に夢中だった。9歳の時、脊髄に腫瘍が見つかり、一命はとりとめたものの、車いす生活を余儀なくされる。母親にTTCに連れてこられ、車いすテニスと出会った。現在でも練習拠点にしているのが、国枝慎吾さんである。