見える「がん治療」 国産薬で切り開く 量研発ベンチャーのリンクメッド、放射性新薬で同時診断

リンクメッドの吉井幸恵社長
リンクメッドの吉井幸恵社長

がんの診断と治療を同時に行うことができる「見える『がん治療』」の開発に挑んでいるベンチャー企業がある。次世代型放射性医薬品の実用化を目指すリンクメッド(千葉市稲毛区)だ。現在、悪性脳腫瘍と膵(すい)がんの治療薬を開発。脳腫瘍治療薬については安全性と投与量を確認するための第1段階の臨床試験を進めている。薬事承認を得て、令和9年にも実用化を目指している。

リンクメッドは、国立研究開発法人「量子科学技術研究開発機構(量研)」発の医薬品ベンチャーだ。社長の吉井幸恵氏は量研の上席研究員でもあり、リンクメッドが開発しているがん治療薬に用いられる銅の放射性同位体「カッパー64」を研究、「高い品質でつくる技術を確立してきた」(吉井氏)経験を持つ。

カッパー64はこれまでの放射性治療薬で使用されてきたベータ線だけでなく、「オージェ電子」と呼ばれる特殊な放射線を放出。高いエネルギーを持つオージェ電子ががん細胞を攻撃し、効果的に治療できる特性を備えているという。

開発した悪性脳腫瘍の治療薬は、カッパー64を含んだ低分子化合物。悪性脳腫瘍は腫瘍内部が低酸素化するために化学療法や放射線治療が効きにくくなることが知られているが、リンクメッドの治療薬は低酸素化した細胞に集積する特性があり、腫瘍の増殖を抑制する効果が期待されている。

一方、カッパー64は陽電子も放出する特性を持っており、PET(陽電子放射断層撮影)診断で確認することができる。このため、治療薬ががん細胞に集積していることを確認しながら、「見える『がん治療』」を行うことが可能だ。膵がんは自覚症状がなく、早期発見が難しいとされるが、PET診断で確認できる特性を生かした早期発見治療薬を開発。マウスによる臨床試験では3ミリの膵がんを発見できた。

脳腫瘍治療薬は平成30年10月から国立がん研究センター、神奈川県立がんセンターの2カ所で患者に投与する臨床試験を実施している。早ければ年内にも薬の有効性を確認する第2段階の臨床試験に移行する。

薬事承認を得られるのは第2段階の臨床試験から最短でも3年とされるが、承認前から千葉市内で治療薬の工場建設に着手。令和7年にも稼働できる体制を整える。リスクも考慮し、コンビニ店舗ほどの大きさとする考えだ。医薬品卸の岩渕薬品(千葉県四街道市)と資本提携したほか、さらなる資金調達に向けベンチャーキャピタルとも交渉している。

海外のメガファーマ(巨大製薬会社)に対し、治療薬の製造技術や臨床データなどをパッケージにしてライセンス販売する交渉も進めている。

日本ではこれまで、放射性治療薬は全て海外からの輸入に頼ってきた。吉井社長は「国産薬としてがん医療の未来を切り開き、1人でも多くの患者を助けたい」と話している。(高橋俊一)

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