ガーランドテストに合格する?
23年の内に、意識をもつ機械が誕生することはない。それ以降も決して生まれないだろう。しかし、たとえ本当に意識があると信じるに値する理由はなくても、あたかも意識をもっているような印象を与える機械は誕生するかもしれない。それは「ミュラー・リヤー錯視」のようなものだろう。同じ長さの線なのに、違う長さに見える錯覚のことだ。
そのような機械は、機械の知性を判定するベンチマークとして欠陥があることで知られているチューリングテストには合格しないだろうが、映画『エクス・マキナ』の監督アレックス・ガーランドにちなんで名付けられたガーランドテストには合格すると考えられる。同映画の会話から着想を得た同テストでは、人がある機械を前にして、それが機械であることを知っていながら意識が宿っていると感じるとき、その機械は合格したとみなされる。
23年に、コンピューターはガーランドテストに合格するだろうか? わたしはそう思わない。しかし、そのような主張が繰り広げられ、その結果としてさらなる熱狂や混乱が生じ、現在のAIが引き起こした数多くの問題から人々の目をそらすと予想できる。
アニル・セス|ANIL SETH
認知神経科学者、サセックス大学の認知および計算論的神経科学学部教授。著書に『Being You: A New Science of Consciousness』がある。
(Translation by Kei Hasegawa, LIBER/Edit by Michiaki Matsushima)
※雑誌『WIRED』日本版VOL.47 特集「THE WORLD IN 2023」より転載