(月刊「丸」・昭和51年10月号収載)
轟然たる命中音
昭和十七年の元旦は、アメリカとハワイの中間あたりで迎えた。ここではまだ絶対に安全とまではいかなかったけれども、見張りさえ厳重にすれば、昼間でも水上航走ができた。
当直以外は、全員が上甲板に整列して皇居遙拝を行なう。
しばらくぶりに掲げられた軍艦旗が朝風を受けて、はためいている。
田上艦長の「最敬礼」という、リンとした号令が洋上にひびきわたる。乗員はいっせいにはるかなる故国にたいして遙拝する。続いて各自は故郷にむかい、思い思いに頭をたれた。雑煮はカン詰めのモチを煮て祝った。