小学生の女児らにわいせつな行為を繰り返したなどとして、大阪府警捜査1課は19日、強制性交致傷などの疑いで、吹田市桃山台の無職、柳本智也被告(26)=強制性交罪などで起訴=を再逮捕したと発表した。「成人女性だと抵抗されて警察に通報されるかもしれないという考えがあり、小学生の女児を狙った」と容疑を認めている。柳本容疑者は平成28年以降、6年以上にわたって帰宅途中の小学生の女児を狙った犯行を重ねており、府警は計10人の被害を裏付けた。盗撮容疑などを含めた計40件を立件し、捜査を終えたとしている。
下校時間や保護者の所在をメモ
再逮捕容疑は28年3月~令和4年7月、府内の集合住宅で帰宅中の女児8人を待ち伏せ。女児にカッターナイフを見せて「殺すぞ」「刺すぞ」などと脅してわいせつな行為をしたなどとしている。
府警によると、柳本容疑者は特定エリアの女児を狙っており、当時の勤務先だった病院の休日を利用して女児を物色。携帯電話には、狙いをつけた女児の下校時間や帰宅時に保護者が在宅しているかなどを調べたメモが残されていた。1年かけて同じ女児の行動を確認していたケースもあるという。
柳本容疑者は「大学生のころ、アダルトサイトで見た漫画の内容をまねした」と供述している。柳本容疑者は、現場付近の防犯カメラの位置を事前に確認してから犯行に及んでおり、府警はカメラを増設して柳本容疑者を特定。昨年7月に強制性交容疑などで逮捕した。
府警は、犯行中に動画を撮影し、複製したとする児童買春・ポルノ禁止法違反容疑や、府内の集合住宅の成人女性の部屋に侵入し盗撮したとする府迷惑行為防止条例違反容疑などでも再逮捕や追送検した。
「友達が入院したから」 言葉巧みに近づき犯行
小学生女児を狙った卑劣な犯行に、府警幹部は「抵抗ができない子供を狙って犯行を重ねており、許されない」と憤る。子供を狙ったわいせつ事件は今も後を絶たず、専門家は子供に身の守り方を伝える重要性を指摘する。
警察庁のまとめによると、令和3年に摘発された強制わいせつや盗撮などの性犯罪事件のうち、被害を受けた小学生と未就学児は計301人に上った。うち84人が強制性交や強制わいせつ事件の被害に遭っていた。性的な写真を要求するなど交流サイト(SNS)を利用したケースも増えているが、路上で巻き込まれるケースが少なくないとみられる。
小学生以下が路上で強制わいせつや傷害などの事件に巻き込まれた犯罪の認知件数は平成30年で573件。犯人側が「道を教えてほしい」「友達が入院したから一緒に行こう」などと言葉巧みに近づくほか、親の不在時など人目につかない時間帯や場所を狙うケースが目立つ。
ブザーや声かけ 「隙を与えないで」
NPO法人「日本こどもの安全教育総合研究所」の宮田美恵子理事長は、周囲の大人が、防犯ブザーの利用や一人きりになる時間を短くするなど日頃から子供に防犯行動を伝える必要性を訴える。
宮田さんは「できるだけ隙を与えないことが重要だ」とし、具体的な対策として、鍵を首から下げたりせず、周囲から見えない場所にしまう▽登下校ルートに商店へのあいさつなど大人の目を入れる▽躊躇(ちゅうちょ)なく防犯ブザーを鳴らせるように、親子で声掛けへの対応シミュレーションをしておく-などを挙げた。(小川恵理子、中井芳野)