「親ガチャ」「片親パン」…若者の間で格差示すネットスラングが先鋭化 差別助長に懸念

大学入学共通テストの試験会場に向かう受験生ら(安元雄太撮影)
大学入学共通テストの試験会場に向かう受験生ら(安元雄太撮影)

今年の大学入学共通テストで「親ガチャ」を想起される問題が出され、注目を集めた。「親ガチャ」は、子供は親を選べず、家庭環境によって人生を左右されることを、カプセルトイのガチャ(くじ引き)に例えた造語で、令和3年の「新語・流行語大賞」トップ10にも選ばれた。最近では、ひとり親の食事環境を示す「片親パン」など、家庭の格差を示すネットスラングの先鋭化が進み、差別の助長につながるとの懸念が広がっている。筑波大の土井隆義教授(社会学)は、先鋭化の根底には不安があるとし、法に触れるものはしっかり取り締まるべきだと話す。

共テの問題文に?

「すごい豪邸…、こんな家に生まれた子どもは運がいいね。不平等だな」

豪邸を目にした高校生2人が、運の違いで生まれる格差について話し合う設問は、共通テストの初日、14日の倫理で出題され、SNS(交流サイト)で「親ガチャの話が出た」と話題になった。親ガチャは教育格差にもつながる課題として、令和3年10月には臨時国会の代表質問でも取り上げられた。

家庭の格差を示すネットスラングは後を絶たない。今年1月、ツイッターでトレンド入りした「片親パン」は、量が多くて安価な菓子パンを指す。令和4年に動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」で、ひとり親家庭を自称する投稿者が、ひとり親家庭の子供は「5個入りのクリームパン」を食べて育っているという説を紹介した動画が反響を呼んだ。さらに今年1月、ツイッターで同様のパンを示す造語「片親パン」が拡散。この造語も、過去に当事者が発信したものだったが、不特定多数によって拡散して使用され、差別につながるとして懸念の声が広がっている。

なぜ過激化するのか

筑波大学の土井隆義教授(社会学)
筑波大学の土井隆義教授(社会学)

このほか、質素な畳の部屋で配信を行う配信者を示す「和室界隈」など、経済格差を示すネットスラングが次々に登場し、先鋭化している。土井教授は、その背景について、「ネットでは、自分の書き込みがどれだけ注目を集めるかということを重視し、過激化していく傾向がある」とした上で、根底には不安があると語る。

そのうえで、インターネットでは他者の生活が可視化されやすいことに加え、ネット社会の平等性がかえって小さな違いを際立たせ、格差感覚が研ぎ澄まされていきやすい面もあると指摘し、「いつ自分が否定される側に転ぶかわからないという不安感からあえて境界線を引き、自分は違うんだと安心するために過激化する場合もある」という。

また、差別につながるネットスラングが当事者から発せられるケースがあることについて土井教授は、「例えば、リアルな会話の場でも『俺、コミュ障(コミュニケーション障害)だから』と、あらかじめ予防線を張って話すことがあるように、自分を卑下した言葉を使って相手に優位性を与えたほうが、相手から攻撃を受けにくく、承認もされやすいことから、自虐的に使うケースも考えられる」と分析する。

土井教授は過激化するネットスラングについて、差別表現は問題視し、法に触れるものはしっかり取り締まるべきだとした上で、注目されることを目的とした過剰な表現は、無視をして取り合わないことも方策の一つだと強調。「いまやネットは日常生活のインフラであり、ライフラインでもあることから、見ないのは難しいと思うが、スルーする術を身に着けていくのも、ネットリテラシーとして必要なのではないか」と語った。(本江希望)

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