知論考論

大学入試にどう臨む? 必勝「受験脳」のつくり方と今年の傾向徹底解説

大学入学共通テストに臨んだ受験者ら。今後、国公立大二次試験や私立大の入試が本格化する=1月15日、東京都文京区の東京大(鴨志田拓海撮影)
大学入学共通テストに臨んだ受験者ら。今後、国公立大二次試験や私立大の入試が本格化する=1月15日、東京都文京区の東京大(鴨志田拓海撮影)

大学入学共通テストが終了し、国公立の二次試験や私立大の入試が本格化する。近年は「大学全入時代」という言葉をよく耳にするが、志望大学に進学するには激戦を勝ち抜かなければならない。一方で、価値観が多様化する中で、卒業後を見すえた大学選びの重要性は高まっている。今年の傾向や志望大学の選択方法、そして勝ち抜くための効率的な学習方法について識者に聞いた。

東京大薬学部教授 池谷裕二氏

脳は「出力」増やすと記憶する

いけがや・ゆうじ 昭和45年、静岡県生まれ。平成10年、東京大大学院薬学系研究科で薬学博士号取得。米コロンビア大客員研究員を経て、26年から東京大薬学部教授。専門は神経科学、脳研究。一般向けの執筆を続けるほか、コメンテーターとしても活躍。著書に「記憶力を強くする」「受験脳の作り方」など多数。
いけがや・ゆうじ 昭和45年、静岡県生まれ。平成10年、東京大大学院薬学系研究科で薬学博士号取得。米コロンビア大客員研究員を経て、26年から東京大薬学部教授。専門は神経科学、脳研究。一般向けの執筆を続けるほか、コメンテーターとしても活躍。著書に「記憶力を強くする」「受験脳の作り方」など多数。

受験勉強に取り組むにあたって知っておいた方がいいことは、脳が記憶を忘れる仕組みだ。学習によって得た知識は受験生にとって大切な情報だが、脳にとってはそれほど重要ではない。いったん脳の海馬(かいば)という場所に入りそのままにしておくと、おおむね1~3カ月で忘れてしまう。

この一時的に蓄えられたときが復習のチャンス。多くの人が復習では何度も知識を頭にたたき込まなければ覚えられないと思っているが、参考書を何度も読むよりも知識を使うために多く問題を解く方が効果的だ。脳にとって記憶は未来の自分に贈るプレゼント。知識が将来、役立つかどうかを基準に海馬でふるいにかけるが、入力するばかりだと脳は逆に「こんなに入ってくるならわざわざ覚えなくていい」となり、出力する機会が増えると「こんなに使う機会があるのなら、取り置いておこう」となる。

この際、問題を間違えることがあっても、落ち込む必要はない。ネズミを使った記憶の実験では初期の段階で、多様な間違いをしたネズミはあれこれと考えるため成績が伸び、運よく正解したネズミは思考が停止してあまり成績が伸びない。復習ではどういう考え方の筋道で誤った回答につながったのか、その分岐点を見つけ、同じ間違いを繰り返さないことが試験の結果につながる。

学習で得た知識などの記憶を長期的に定着させる際に脳内で起きるのがLTP(長期増強)。脳の神経細胞をつなぐシナプスが強くなるが、この現象には特定の脳波が影響する。

海馬では覚える対象に興味を抱くことなどで出るシータ波、海馬から大脳皮質に記憶を伝達し長期的に定着させる際には、睡眠中に出るリップル波がLTPを促す。睡眠時間を削って受験勉強をする人がいるが、これは逆効果。就寝前の勉強でしっかり知識を蓄え、睡眠中に記憶を定着させることが大切だ。

私はこうして覚えた記憶を3層のピラミッド型に分け、上から経験記憶、知識記憶、方法記憶と呼んでいるが、この中で最も原始的な方法記憶を重視している。自転車の乗り方のように、トレーニングを繰り返すことによって無意識につくられる記憶で、他の記憶より根強く忘れにくいという利点がある。

私は小学生のころから「九九」をすべて暗記することができない。海馬の機能が弱いのだと思う。それでも計算方法を工夫し何度も何度も解くことで、二桁の掛け算でもすぐに答えが分かり、数学や理科の公式は覚えなくてもテスト中に導き出すことができた。方法記憶は身に付けるまでにかなり時間がかかるが、公式の原理も理解できるので応用力が発達した。

これから受験勉強を始めるなら、夏休みなど長期の休みを使って、いかに能動的に学習に取り組むかが大切だ。夏期講習などを受けることも一見、能動的に見えるが、それだけでは足りない。

そこでおすすめしたいのが、ここ20年くらいの教育心理学でトレンドになっている「自己調整学習」。自ら何のために学習するのか動機を考え、目標を設定して学習時間や教材を決め、困難に直面した際には解決する力を鍛える。さらにそうした自分を客観的に観察し、学習に臨む姿勢を制御するための力を身に付ける学び方だ。

米国では小学生くらいからこうした教育プログラムが取り入れられていることもあり、読解力の向上など長期的な効果が確認されている。日本で取り入れているのは一部の先進的な学校に限られるが、こうした教育が今、最も求められているのではないだろうか。(聞き手 山本考志)

河合塾主席研究員 近藤治氏

難易度上昇は文系理系どっち?

こんどう・おさむ 昭和60年、河合塾入職。教育情報分析部門で大学入試動向分析を担当。進学情報誌「ガイドライン」「栄冠めざして」などの編集にも携わる。中部本部長として塾生指導などを経て、令和3年4月より河合塾教育研究開発本部主席研究員を務める。
こんどう・おさむ 昭和60年、河合塾入職。教育情報分析部門で大学入試動向分析を担当。進学情報誌「ガイドライン」「栄冠めざして」などの編集にも携わる。中部本部長として塾生指導などを経て、令和3年4月より河合塾教育研究開発本部主席研究員を務める。

18歳人口の減少が続く時代にあって、大学志願者数が減少する一方で、大学側の入学定員は増えている。大学全入時代は限りなく目前に迫っているといえるが、そうはいっても計算上だけの話で、行きたい大学に誰でも入れるというわけではない。選ばなければ入ることができるということだ。

大学受験は「合格が目標」ではなくなってきている。今の受験生の保護者世代にあたる団塊ジュニア世代が受験したころは今よりもっと激戦で、「とにかく合格」を目標にしている人も多かった。だが、今は入学後、さらに卒業後を見すえた大学選びになってきているといえるだろう。

入試科目や偏差値だけにとらわれるのではなく、「自分がやりたいこと」から逆算して志望する大学を選ぶ。その上で、その大学に入るためにどのような入試方式があるのかを調べる、といった思考をすべきだ。受験制度は多様化しており、その点でも保護者世代より恵まれているといえるかもしれない。

大学に関するさまざまな情報も入手しやすくなっており、いろいろ調べてほしい。ただ、受験生の高校3年になってから、というのでは遅いので文理選択の前の高校1年生の夏頃などに情報を収集して臨んでほしい。大学側が受験生を選ぶ時代は終わりが近づいており、これからは受験生が大学を選ぶ時代になりつつある。

文系・理系の志願者割合のバランスは、景気の悪化状況に大きく左右される。長引く不景気で世帯収入が下がり、教育費の捻出が難しくなれば、おのずと私立ではなく国公立を選ぼうとする家庭は増えるだろう。国公立に多く設置され、就職に有利なイメージが強い理系学部への進学を目指す受験生が増え、「理高文低」の傾向に転じる。

新型コロナウイルスが蔓延(まんえん)する前は、経済、経営、商学部などの人気が高い「文高理低」が続いていたが、近年は理系が堅調だ。

新型コロナの感染状況やロシアのウクライナ侵攻、それに伴う急激な物価高と円安など、世界情勢は混沌(こんとん)としているが、こうした社会の状況も受験生の志望動向に大きく関わっているといえる。

予備校業界では、こうした文系と理系の人気のサイクルは7~8年周期で入れ替わってきたとみられていたが、近年はその間隔が短くなっているように感じる。インターネットの普及などで人々の周りに情報が満ちあふれ、流行の移り変わりも早くなっている影響ではないだろうか。

現役で大学進学する人が増え、浪人の数そのものは年々減っているが、河合塾では合格した大学があるにもかかわらず、浪人を選ぶ「合格浪人」はここ3年間で増えている。大学の合格者数が増えたことで、第1志望ではなかった大学に合格し、一度は入学したものの、進学先に納得できず在籍しながら、再び受験する「仮面浪人」もいる。

併願先を決めるにあたり、合格が欲しい気持ちは十分に理解できるが、合格してもその大学に入学する意志があるのかどうかをまず自問自答してほしい。第2志望、第3志望というような順位は関係なく、入りたい大学を受けてその中から進む先を決めるべきだ。

受験は年々広き門になっている。だからこそ、そのときの流行を追ったり、単純に入試科目の得意不得意だけで決めるのではなく、じっくりと学びたい内容を見極めて、「行きたいところ」にこだわって進学してほしい。(聞き手 木ノ下めぐみ)

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