日韓間の最大の懸案となっている「徴用工」問題をめぐり、韓国政府が解決案を提示した。
韓国最高裁の判決が日本企業に命じた賠償金について、それに相当する額の支払いを韓国政府傘下の財団に肩代わりさせる。これにより、同国内で差し押さえられた日本企業資産の現金化を防ぐ狙いがある。
反日に凝り固まっていた文在寅前政権に比べ、日韓協力を重視する尹錫悦政権が、解決を模索している点は理解できるが、今回の案には問題点がいくつもある。
そもそも、本来は日本側が賠償金を支払うべきだとする前提が間違っている。「国民徴用令」という法令に基づき、昭和19年9月以降働いていた朝鮮半島出身者は存在したが、不当な強制労働ではない。賃金支払いを伴う合法的な勤労動員で内地人も働いていた。このような勤労動員はどの国でも行われていたものである。
その上、日韓の賠償問題は1965年の請求権協定で「個人補償を含め、完全かつ最終的に解決」している。
韓国側が「徴用工」問題をつくり出した。被害者は日本側である。賠償命令は国際法を逸脱した韓国司法の暴走で、日本側が支払ういわれはない。韓国国内の問題として「解決」すべきである。
今回の解決案は、原告側が求める日本企業による謝罪、財団への資金拠出を条件として明示しないが、日本がこれまで表明した謝罪と反省の維持、継承が重要とした。韓国政府は、日本企業による自発的な寄付など「誠意ある呼応」を期待しているという。
だが、日本側はこれに応じてはならない。自国の歴史に不当な傷をつけることになりかねない。
財団が「肩代わり」した賠償金の返還を、将来にわたって日本企業に求めないようにすることも極めて重要だ。韓国は歴史問題に絡む日韓間の合意を何度もほごにしてきたからだ。
林芳正外相は13日、韓国の朴振外相と電話会談し、緊密な意思疎通を継続する方針で一致した。岸田文雄首相は「徴用工」問題解決を前提に、5月の広島での先進7カ国首脳会議(G7サミット)への尹氏の招待を検討しているという。北朝鮮を前に日韓の結束は意味があるが、日本と日本企業の立場を損なわないよう解決案を慎重に見極める必要がある。