ビジネスパーソンの必読書

『教養としてのチャップリン』『人権尊重の経営』『ドキュメンタリーの舞台裏』

■■掲載えとき■■ 『教養としてのチャップリン』 ■■キャプション■■『教養としてのチャップリン』
■■掲載えとき■■ 『教養としてのチャップリン』 ■■キャプション■■『教養としてのチャップリン』

令和5年、卯年が始まった。読書を糧に、変化を恐れず常に跳躍のチャンスをうかがう年にしたい。(情報工場「SERENDIP」編集部https://www.serendip.site/

キャラ肖像権を確立

『ビジネスと人生に効く 教養としてのチャップリン』大野裕之著(大和書房・1760円)

没後45年以上たつ今も世界中で親しまれている喜劇王チャールズ・チャップリン。生涯や作品をひもときながらその本質を読み解く。

チャップリンは、キャラクタービジネスを確立した一人だという。1914年に、おなじみのちょびひげ、山高帽のキャラクターが誕生すると、まねる役者やコメディアンが続々と登場。そこでチャップリンは彼らを相手どって訴訟を起こし勝訴。世界で初めてキャラクターの肖像権が確立されたことになる。

またチャップリンは映画製作過程で大量のNGを出した。撮り直しを繰り返しながらムダをそぎ落とし、世界中の人が笑える要素だけを残した。その過程で差別的な表現はカットされ、結果として彼は「ヒューマニズムの映画作家」と呼ばれる。彼のヒューマニズムは頭でっかちなものではないと著者は指摘する。

「シンプルだけれど可笑(おか)しい」がチャップリンの特徴だろう。もう一度作品を見直してみたくなった。

日本も求められる

『人権尊重の経営』櫻井洋介著(日本経済新聞出版・2860円)

2011年に国連人権理事会で承認された「ビジネスと人権に関する指導原則」などをもとに、企業の人権尊重の取り組みについて押さえておくべき知識を解説。

一般的には環境対策のイメージが強いSDGs(持続可能な開発目標)だが、全17目標のベースに人権尊重があるのだという。

サプライチェーンに児童労働を強制している企業が含まれていないかをチェックするなど、グローバル化に伴い日本企業にも明確な人権問題へのコミットメントが求められている。

指導原則の中核といえるのが「人権デュー・ディリジェンス」。企業活動における、人権への負の影響を特定し、防止・是正措置を実施する。そして実施状況をモニターし、結果の開示による継続的改善を行う。日本ではSOMPOホールディングス、ライオンなどが取り組みを始めている。

人権軽視や人権侵害が発覚するとブランドを損ね、時に不買運動にまで発展しかねない。各企業の取り組みに期待したい。

想定外は歓迎

『ドキュメンタリーの舞台裏』大島新著(文芸春秋・1650円)

「情熱大陸」をはじめとするテレビ番組の制作や、映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」の監督などで知られ、映画監督の大島渚氏を父に持つドキュメンタリー作家、大島新氏。その作品づくりの考え方やプロセスを自ら語る。

大島氏が重視するのは「複眼の映像」。同氏がディレクターの場合、カメラマンとの2人体制で取材にあたることが多い。ディレクターが対象者に話を聞き、その様子をカメラマンが撮影していくのだが、ディレクターは対象者に神経を集中させるあまり視野が狭くなることがある。そんな現場を一歩引いた視点で眺めるカメラマンがいるとバランスがとれる。

またドキュメンタリーにおいて、台本はあってないようなもの。想定外の出来事はむしろ歓迎される。それを作品にどう生かすかを考えながら臨機応変に構成を組み立てていくのだ。

ビジネスシーンでも「想定外」はつきものだ。ドキュメンタリーづくりから多くを学べるのではないか。

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