棋士列伝

囲碁・安田明夏初段(20)TVで人気 決めポーズ

テレビ番組で注目を集めた安田明夏初段の決めポーズ。現在は新しいポーズが登場している=神戸市垂水区
テレビ番組で注目を集めた安田明夏初段の決めポーズ。現在は新しいポーズが登場している=神戸市垂水区

昨年4月から出演しているNHK・Eテレの「囲碁フォーカス」。さわやかな笑顔で両手で三角を作り「バランスチャート」という決めポーズとせりふが人気を集めた。現在は、林漢傑(りん・かんけつ)八段と出演している講座では新しいポーズが登場し、新たな囲碁ファン獲得が期待されている。

「最初はがちがちに緊張していましたが、最近はましになったと思います」

囲碁を始めたのは5歳の頃。アマ高段者の祖父に教えられ、興味を持った。後に師匠となる堀田陽三・九段が主宰する神戸市垂水区の「神戸囲碁倶楽部」へ通った。ほかの習い事もしていたが、囲碁が一番長く続いた。「同世代の子供がいて楽しかったんです」と振り返る。

中学生になると、ほぼ毎日通った。中学2年生の夏、全国大会「少年少女囲碁大会」に6位で入賞した。この結果がプロを意識することになった。

その年の秋、日本棋院関西総本部の院生になった。師匠は関西棋院所属だが、「知り合いが多い関西棋院よりも勉強に集中できる」と日本棋院の院生になるよう、堀田九段や両親からすすめられたという。

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院生は土・日曜に関西総本部などに集まり、「院生手合」(対局)を行う。リーグ戦で規定の成績を収めれば、プロの初段になれる。

神戸囲碁倶楽部での楽しい日々とは全く違った。院生はライバルとの競争に勝って入段(プロ入り)しなければならない厳しい世界だった。

下位のリーグに落ちたり、同世代の院生が先にプロになったりし、やめたいと思うこともあった。「勉強するのもいやになってしまって。でも勉強しなかったらもっと負ける。焦るし、悪循環だった」

両親や堀田九段に「無理をしないで気楽に」と声をかけられ支えられた。努力も実った。令和2年度の院生研修リーグで4位となり、女性ではトップの成績に。3年4月、女流特別採用推薦でプロ入りした。

師匠の堀田陽三・九段(左)と安田明夏初段=神戸市垂水区
師匠の堀田陽三・九段(左)と安田明夏初段=神戸市垂水区

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入段してもうすぐ丸2年になる。「皆さんすごく強い」と公式戦では厳しい戦いを強いられている。研究会にも参加し、腕を磨く。忙しい日でも、詰め碁だけは毎日やると決めている。人工知能(AI)搭載ソフトによる研究にも取り組んでいる。

今年の目標は「まずは女流棋戦の本戦入りを頑張りたい」と話した。

囲碁以外では、韓国語の勉強もしている。高校生の頃に1カ月間、一人で韓国の囲碁道場へ修業に行ったことがきっかけ。ドラマにもハマった。ハングルの検定試験も受けている。

大学に通いながらの棋士活動。東京での番組撮影もこなしながら、地元・神戸囲碁倶楽部などでの普及の仕事も大切にしている。「小さい子供に教えて、囲碁を打てる人を少しでも増やしたい」。忙しい日々は、まだまだ続きそうだ。

やすだ・あきか 平成14年、神戸市出身。令和3年4月、堀田陽三・九段門下でプロ入り。日本棋院関西総本部所属。4年4月からNHK・Eテレの「囲碁フォーカス」に出演中。神戸囲碁倶楽部でも活動している。趣味はラーメンの食べ歩きなど。


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