主張

国内コロナ3年 高齢者対応に万全尽くせ 死者最多の原因究明が課題だ

新型コロナウイルスの感染者が国内で初めて確認されてから15日で丸3年となる。

変異株のデルタ株から重症化しにくいオミクロン株に置き換わって以降、致死率は低下した。岸田文雄首相は本格的に、社会経済活動の再開にかじを切った。

一方、感染力が強いため、軽症者が急増し、発熱外来の逼迫(ひっぱく)や、自宅で簡単に検査ができる抗原定性検査キットの不足など新たな問題が起きた。

それでも増えるのが軽症者なら、気にすることはない―。われわれは、そう高をくくっていたのではないだろうか。

7波越えを前提にせよ

第8波では、1日当たりの新型コロナ感染者の死者数が500人を超え、過去最多を更新している。季節性インフルエンザも流行期を迎えた。今一度気を引き締め、感染対策を徹底したい。

死者の大半は高齢者だ。累計で6万人を超え、昨年12月1日に5万人を超えたばかりにもかかわらず、1カ月余りで1万人も増えた。驚くべき増加速度である。

国立感染症研究所(感染研)の脇田隆字所長によると、感染で基礎疾患を悪化させたり、老衰を進めたりしている可能性があるという。ただ、脇田氏は「それだけではない。今後調査や分析が必要だ」とも語る。実態把握と原因究明を急いでもらいたい。

死者数が最多にもかかわらず、1日当たりの新規感染者数は、第7波のピークを越えていない。

全数把握の仕方が見直された上、市販の抗原定性検査キットで陽性になっても報告しない人や、感染していても検査しない人がいることが、要因に挙げられている。このため「実際の感染者数の全体を捉えることは困難になっている」(感染研の鈴木基・感染症疫学センター長)という。

岸田首相は、感染状況について第7波を上回っていることを前提に対応すべきである。

病床使用率は全国的に上昇傾向にある。多くの地域で5割を上回り、神奈川県では8割を超えた。救急車の到着後も搬送先が決まらない「救急搬送困難事案」は、3週連続で過去最多を更新しており、事態は深刻だ。

政府や自治体は、病床の確保や介護施設と医療機関との連携、高齢者施設内の療養体制などの状況を早急に確認し、高齢者や基礎疾患のある人らが、確実に必要な治療を受けられるようにしなければならない。検査キットや薬の供給についても万全を期したい。

感染に伴う医療従事者の欠勤が相次ぎ、コロナ医療だけでなく一般医療への影響が出始めている。医療や介護、保育などに従事するエッセンシャルワーカーの人員が不足する事態が拡大するのを食い止めることが必要だ。

ワクチン接種の促進を

気掛かりなのは、オミクロン株対応のワクチン接種が進んでいないことだ。

政府の集計によると、ワクチン接種を2回終えた人は80%を超えたのに対し、オミクロン株対応のワクチン接種は37%に過ぎない。ワクチンに対し不安を抱く人もいる。政府や自治体には、未接種の住民に対し、副反応などについて丁寧に説明をしつつ、改めて接種を促すことが求められる。

ただ、接種率が上がっても、感染状況の先行きはなお不透明と言わざるを得ない。

米国ではオミクロン株の派生型「XBB・1・5」による感染が急増している。他の派生型よりも感染力が強く、免疫を逃れる特徴があるとの指摘がある。

日本ではオミクロン株の派生型「BA・5」が依然主流だが、すでに東京都内で「XBB・1・5」による感染が15件確認されている。これが第8波を長引かせる可能性がある。「XBB・1・5」の解析が急がれる。

感染が拡大しているとみられる中国では22日に春節(旧正月)を迎え、帰省や旅行などで人の大移動が本格化する。日本政府は中国に対し水際対策を強化しているが、水際をすり抜けることも想定しておくべきだ。

国民はこの3年間、コロナとの付き合い方を学び、共存の在り方を模索してきた。日常生活をほぼ取り戻したのもつかの間、国内外の懸念に直面している。社会経済活動との両立を続けるためにも、あらゆる手立てを講じ、感染拡大を抑えなければならない。

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