宇宙ごみ除去サービス事業化へ 人工衛星やロケットの残骸を回収 ベンチャーや大手企業の参入続々

アストロスケールによる宇宙ごみ除去の実証実験。1700キロ離れた模擬デブリ(右)を、実験衛星(左)が捕獲した(同社提供)
アストロスケールによる宇宙ごみ除去の実証実験。1700キロ離れた模擬デブリ(右)を、実験衛星(左)が捕獲した(同社提供)

宇宙ベンチャーのアストロスケールホールディングス(東京都墨田区)は12日、運用終了などで制御不能となった人工衛星などのいわゆる宇宙ごみ(スペースデブリ)の除去サービスを早ければ令和8(2026)年に始めることを明らかにした。このサービスをめぐっては、同社以外にもベンチャー企業や大手企業も参入に向けた動きがあり、宇宙ビジネスは開発や実験の段階から事業化の段階に移りつつある。

「持続可能な宇宙環境という社会課題の解決への道筋が見えてきた」。アストロスケールホールディングスの岡田光信創業者兼最高経営責任者(CEO)は同日、東京都内での記者説明会で、会社設立から10年近くかけて事業化にたどり着く心境をこう語った。

当面の事業方針について説明するアストロスケールホールディングスの岡田光信創業者兼最高経営責任者(CEO)=12日、東京都中央区(松村信仁撮影)
当面の事業方針について説明するアストロスケールホールディングスの岡田光信創業者兼最高経営責任者(CEO)=12日、東京都中央区(松村信仁撮影)


アストロスケールの宇宙ごみ除去衛星には捕獲機が付いている。顧客企業には今後打ち上げられる衛星に強磁性の「ドッキングプレート」をあらかじめ装着してもらう。捕獲機の磁石がドッキングプレートとくっついて回収し、そのまま一緒に大気圏に突入して燃え尽きる。令和3年3月から宇宙空間で実用化に向けた実証実験を始め、4年5月に成功した。今後は軌道上で役目を終えた複数の人工衛星を同時に回収できる技術の開発も進め、宇宙ごみ除去サービスの開始に備える。

宇宙ごみとは、人工衛星を打ち上げた際に使ったロケットの残骸や、運用終了や故障に伴い制御不能になった人工衛星の総称。大きさが10センチ以上のものだけでも約3万6500個、1センチ以下のものも含めると1億3000万個もあるとされ、それぞれが秒速8キロで飛び交っている。仮に人工衛星に衝突すれば、気象観測やGPS(全地球測位システム)などにも大きな影響を与える可能性がある。

ベンチャー企業や大手企業も参入

宇宙ごみをめぐっては、様々なベンチャー企業や大手企業も除去技術の開発に乗り出している。宇宙ベンチャーのALE(エール、東京都港区)は宇宙航空研究開発機構(JAXA)や神奈川工科大学などとともに、独自の宇宙ごみ除去技術の開発に取り組んでいる。人工衛星から長いひも状の導電性テザーを宇宙空間で展開し、地球の磁場を使って衛星を軌道から外すことで大気圏に突入させ、焼却廃棄させる。あらかじめこの導電性テザーを衛星に積んでおき、運用終了の際に衛星から導電性テザーを垂らす。このほど技術開発のめどが立ち、「宇宙空間での実証実験に向けた準備に入っている」(同社)段階だ。

大手企業では、スカパーJSATや理化学研究所などが、宇宙ごみをレーザーで除去する技術を開発。微弱な出力のレーザーを短時間ずつ繰り返して宇宙ごみに照射すると宇宙ごみがレーザーに押されるように動き出し、徐々に高度を下げて大気圏に突入する。令和8年のサービス開始を目指している。

ALE(エール)が開発した宇宙ごみを除去する導電性テザー(イメージ、同社提供)
ALE(エール)が開発した宇宙ごみを除去する導電性テザー(イメージ、同社提供)

地上へ落下の危険性も

カナダのブリティッシュコロンビア大の研究チームは2022年夏、宇宙ごみが今後10年間で、地上に落下して死傷者を出す確率が10%に上るとの分析結果を公表。実際に20年には中国のロケットの一部が大気圏で燃え尽きずにアフリカのコートジボワールに落下。また21年11月にはロシアが自国の衛星を宇宙空間で爆破し、少なくとも1500個以上の宇宙ごみが発生したという。

1957(昭和32)年、当時のソビエト連邦が世界で初めて人工衛星を打ち上げて以来、これまで世界で約1万3000機が打ち上げられた。2021年に世界で打ち上げられた人工衛星は1809機。10年前の11年の約14倍に達した。衛星の小型化が進み、今後はベンチャー企業を中心に数多くの人工衛星の打ち上げが見込まれ、過密状態が進むだけでなく、故障した衛星との衝突なども増える可能性が高い。宇宙での持続可能な開発を進めるうえでも、日本企業によるデブリ除去技術は世界の関心を集めそうだ。(松村信仁)


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