ファッション誌「ViVi」の専属モデルで女優としても活躍する埼玉県出身の嵐莉菜さん(18)。昨年5月に公開された映画「マイスモールランド」(川和田恵真監督、日仏合作)では初出演で主演の大役を務めた。映画はベルリン国際映画祭のアムネスティ国際映画賞・特別表彰など数々の賞を受賞。充実の1年を駆け抜けた嵐さんに今後に賭ける思いを聞いた。(星直人)
中学2年のときに友人の勧めで動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」に投稿した動画がバズり、現在所属する事務所にスカウトされたのがデビューのきっかけだ。
日本とドイツ、イラン、イラク、ロシアの5カ国にルーツを持ち、幼少期は違和感を覚えることもあったという。それでもモデルとして活動する中で、自らのアイデンティティーが周囲から求められているという経験を重ね、次第に「自分の個性として大切にできるようになった」と振り返る。
演技で視野が広がる
初主演映画の主人公、サーリャは自分の居場所に葛藤する在日クルド人の少女で、自身の境遇と異なる部分もあったが、川和田監督の親身なアドバイスで「撮影を重ねるごとにサーリャに近づくことができた」と明かす。初めて演技を経験し、「新しい知識を学びながらお芝居をすることで自分の視野が広がる」という発見もあった。
昨年の釜山国際映画祭では人生初のレッドカーペットも闊(かっ)歩(ぽ)。日本映画の振興に貢献した映画人に贈られる「第45回山路ふみ子映画賞」では新人女優賞に輝くなど女優として充実の1年となった。
埼玉の地は「安心感」
今年の目標は「進化」。女優としてアイデンティティーや多様性を重視した作品にとどまらず、アニメの実写版など「さまざまなジャンルの作品にも挑戦していきたい」と意気込み、専属モデルを務めるファッション誌の「看板モデルになれたら」とも。「たくさんの人を魅了できる存在になりたい」とさらなる飛躍を誓う。
嵐さんにとって故郷の埼玉は「田舎過ぎず都会過ぎず自然も豊かで安心感のある場所」という。県鳥のシラコバトにちなんだ県のマスコット「コバトン」のぬいぐるみを手にすると「小・中学校の給食の牛乳にプリントされていたので、すごく懐かしい」とほほえんだ。
嵐さんらの映画賞受賞を記念し、凱旋(がいせん)上映がMOVIX川口など全国4カ所で行われる予定。
あらし・りな 平成16年5月3日生まれ。講談社主催のオーディション「ミスiD2020」でグランプリ&ViVi賞のW受賞。令和2年から雑誌「ViVi」の専属モデルとして活躍中。母親が日本とドイツのハーフ、父親がイラン、イラク、ロシアにルーツを持つ。「第45回山路ふみ子映画賞」新人女優賞などを受賞している。