【キーウ=佐藤貴生】ウクライナ正教会は東方正教会のクリスマスに当たる7日、ロシアの影響下にあったことで知られる首都キーウ(キエフ)の有名な修道院でミサを行うと発表した。修道院は露正教会との関係を問題視され、宗教の「脱ロシア化」を進めるゼレンスキー政権が最近、国に管轄権を移す法的手続きを終えた。宗教の「脱露」を象徴するものとして、地元メディアは「歴史的」なミサになると報じている。
ウクライナ正教会によると、ミサが行われるのはペチェールスカヤ大修道院の聖堂。修道院は周辺の施設とともに世界遺産に指定された歴史的建造物だが、一方で内部の聖職者は露正教会と親密な関係にあると指摘されてきた。
ウクライナ正教会はソ連崩壊後、露正教会の権威に従うモスクワ系と、それに反対するキーウ系などに分裂した。東方正教会の筆頭権威であるコンスタンチノープル総主教庁(トルコ・イスタンブール)が2018年、ウクライナ正教会に対する露正教会の管轄権を否定する裁定を下したが、モスクワ系も実態として併存してきた。
ゼレンスキー政権はロシアの侵略を受け、ペチェールスカヤ修道院などモスクワ系とされる正教施設を家宅捜索し、反政府文書などが発見されたとして活動停止に向けた手続きを進めてきた経緯がある。
同修道院で5日に会った信徒のアナトリーさん(48)は「宗教を政治問題化して信徒の分断を図っている」と政権を批判した。ただ、ウクライナでは国民の大半が宗教の「脱露」を支持している。シンクタンク「キーウ国際社会学研究所」が先月行った世論調査では、モスクワ系の活動を「完全に禁じるべきだ」「監視すべきだ」との回答が合わせて78%に上った。