ここ数年、国内外で起きた出来事を見てみると、何か文明論的な大転換の兆しがあるように思える。新型コロナ禍にはじまり、プーチンによる開戦、さらには安倍晋三元総理の暗殺事件が起きた。新型コロナ禍は、1990年代以降、急速に日本も巻き込まれた「グローバル化」の負の側面を顕在化させた。ヒト・モノ・カネが国境を越えて自由に流動し、規制緩和のもと、世界経済を一体化させつづけた国際社会は、ウイルス伝播(でんぱ)の前に一たまりもなかった。
表面的な騒ぎの奥に
「経済安全保障」という言葉が頻繁に口にされるようになったのは、コロナ後のことである。またプーチンによるウクライナ侵攻は、東漸する北大西洋条約機構(NATO)に対する、ロシアの拒絶を意味する。冷戦終結はロシアにとって屈辱であり、その後の欧米諸国の対応は、ロシアの自尊心をさらに傷つけるものだった。