鬼筆のスポ魂

侍ジャパンに日系大リーガー、ヌートバー参戦、日本的感覚に適合できるか 植村徹也

ラーズ・ヌートバーは果たして侍ジャパンにフィット(適合)する戦力なのだろうか。日本人的な感覚で言うならば「遅刻はダメよ!」となる可能性もある。

今春の第5回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック=3月8日開始~21日決勝戦)に出場する野球の侍ジャパンのメンバーが今月下旬に発表される。日本人大リーガーではダルビッシュ有投手(パドレス)や大谷翔平投手(エンゼルス)、鈴木誠也外野手(カブス)、吉田正尚外野手(レッドソックス)の参戦が決定した。他にも大リーガーの選手ひとりの参戦が確定的。母親が日本人の日系選手でセントルイス・カージナルスに在籍しているラーズ・ヌートバー外野手(25歳=右投左打)だ。

ヌートバーは18年に南カリフォルニア大からドラフト8巡目で入団し、メジャー2年目の昨季は108試合に出場。打率2割2分8厘、14本塁打、40打点をマーク。日系大リーガーとしては母方の祖父母が日本人のスティーブン・クワン外野手(25歳=ガーディアンズ)も候補だったが、両親が日本のパスポートを所持していないなどの理由で最終的に外れた。

いよいよ3大会ぶりの世界一に輝けるのか、侍ジャパンとしての始動は2月17日~27日の強化合宿(ひなたサンマリンスタジアム宮崎)だ。合宿期間中にはソフトバンクと強化試合を2試合(2月25・26日)行うのだが、ここに来て明らかになったのは強化合宿にはダルビッシュ有、大谷翔平や鈴木誠也が合流する。宮崎から世界一に向けて〝侍の団結〟を固めるのだ。

「ダルビッシュも大谷も鈴木誠也も強化合宿から参加する予定です。メジャー移籍1年目の吉田正尚も来るでしょう。彼らは第2回大会(2009年)以来、14年ぶりの世界制覇に向けてチームのスタートから一緒に練習して、機運を高めるつもりと聞いています。頼もしい限りです」とは球界関係者の話だ。

ところが、日系大リーガーのヌートバーの合流は現時点でも流動的だ。一説には3月6日の強化試合・対阪神戦(京セラ)からの合流を想定している-という情報さえある。ヌートバーは今季がメジャー3年目。カージナルスでのレギュラー争いもある。自軍でのスプリングトレーニングを重視するならば、とても2月中旬の宮崎強化合宿には来られないのかもしれない。場合によっては、ヌートバーの〝侍デビュー〟は3月9日の第1次ラウンド(東京ラウンド)初戦の中国戦のわずか3日前という慌ただしさになりかねない。

それでも侍ジャパンの栗山英樹監督(61)の戦力構想では外野陣は左翼から吉田正尚、ヌートバー、鈴木誠也となることが濃厚。中国戦から韓国、チェコ、オーストラリア戦と続く第1次ラウンドを首位通過して準々決勝を経て、準決勝や決勝の地・米国マイアミに向かうためにはヌートバーの活躍は欠かせない。それが本番直前の合流で果たして大丈夫なのだろうか。

ダルビッシュ有や大谷翔平らが強化合宿から参加する中で、遅れて〝駆け込み乗車〟するならば、結果を見つめる日本人の視線は厳しい。ヌートバーが仮に戦犯となれば、日本人的な感覚で言うならば「遅刻してきてこの不始末か!」となりかねない。そのあたりの感覚をどこまでヌートバーや所属するカージナルスが理解しているのだろうか。

侍ジャパンへの合流時期についてヌートバー側からの返答はまだ返ってきてない。そもそも、日本プロ野球界には柳田(ソフトバンク)、近本(阪神)、塩見(ヤクルト)ら優秀な外野手が揃っている中で「なぜヌートバー?」という声もある。参戦する以上、ヌートバーには日の丸を一番高い場所に掲げる大活躍を見せて欲しいものだ。

(特別記者)

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