新型ホンダ・ダックス125試乗記 足のはやいダックスフンド

原付二種(第二種原動機付自転車)の新型レジャーバイクであるホンダ「ダックス125」に河西啓介が試乗した。

原付二種、流行中

コロナ禍で注目されたモノのひとつがバイクだ。そのなかでもひときわ人気が高まったのは原付二種だろう。80〜125ccクラスの小型二輪である。50ccの原付とは違って30km/hの速度規制や交差点二段階右折などは適用されず、ふたり乗りもオーケー。

いっぽう税金や保険などのコスト面は原付と同じで維持費が安い。高速道路に乗れないということを割り切れば、まさに“美味しいとこ取り”のバイクなのだ。

ホンダの原付二種ラインナップがすごいことになっている。「モンキー125」を皮切りに「スーパーカブC125」、「CT125ハンターカブ」、「クロスカブ110」、「グロム125」……。いずれのモデルも人気が高く、手に入りにくい状況が続いている。そんなホンダ原付二種攻勢のダメ押しとも言えそうなモデルが登場した。ダックス125である。

お手軽な復刻モデルではない

いざダックス125と相対して思ったのは、往年のダックスをとてもよく再現しているという点だ。

その中心を成すのはプレスした鋼板を貼り合わせた、太い楕円形のバックボーンフレーム。ふつうの丸パイプフレームの上にカバーを被せて似せることもできたと思うが、手間をかけて骨格から再現しただけあり、おかげでお手軽なコピーモデル感はまったく感じられない。このフレームと胴長プロポーションは誰がどう見ても“ダックス”である。

いっぽう昭和版ダックスと違うところは“大きさ”だ。感覚的には1.3倍ぐらいになった感じか。ホイールサイズは前後10インチから12インチになっているから、じっさいそれぐらいなのかもしれない。またがってみると厚みのあるシートとも相まって、車格的にはミニバイクやレジャーバイクという感じがしない。

脚つきは173cmの僕で両足がちょうどかかとまでぺったりと着くぐらい。ダックスフンドにしてはずいぶん足が長くなった感じだが、とはいえ車重は107kgと軽いので小柄な人や女性でもさほど不安なく乗れるだろう。

ロータリー式4段トランスミッションのギアをガチャンと踏み込み、走り出す。スーパーカブと同じ自動遠心クラッチを採用しているのでクラッチレバーはない。

ということはつまり“エンスト”することもないということだ(そしてAT限定免許で乗れる)。

1970年代に人気を博した原付レジャーバイク「ダックスホンダ」のリバイバル版と言えるモデル。ダックスとはプレス鋼板フレームを採用した低くて長いデザインが胴長短足の“ダックスフンド”を思わせることから付けられた名前だ。ダックスはその名前どおりの愛されキャラで多くのファンを虜にした。だからこのダックス125の登場が噂されたときから、バイク好きはかなりザワついていたのだ。

ちなみにホンダはモンキー125、スーパーカブC125、CT125ハンターカブなどを往年のモデルをモチーフとしたリビルド(再構築)バイクと呼んでいて、ダックス125はその第4弾となる。

初代ダックスとほぼ同じ歳(1967年生まれ)の僕も、もちろんこの令和版ダックスが非常に気になっていた。じつはCT125ハンターカブを所有しており、それとどう違うのかにも興味があった。

気軽に、素早く、快適に

エンジンは123ccの空冷4ストローク単気筒を積む。最高出力は9.4ps、最大トルクは11Nm。いダックスの車体に対しては充分パワフルで、街なかを転がしている限りは充分に速い。

日ごろ乗っているCT125ハンターカブも「速いなぁ」と、思っていたのだが、体感的にはダックスのほうがさらに速い、というか軽快だ。それに寄与しているのはハンターカブより約10kg軽い車重、そして12インチという小径タイヤゆえの転がりの軽さだろう(ハンターカブは前後17インチ)。

またがった瞬間に感じた頼もしさは、走り出しても同じだった。倒立フォークを採用した剛性感の高いフロントまわり、ABSを備えた(前輪のみ)ブレーキ、ふたり乗りを見越した硬めのサスペンション。いずれもレジャーバイクというよりはモーターサイクルのそれだ。

いっぽうでクラッチ操作不要でギア比がワイドな4MTは、どこかのんびりリラックスした気分で走らせることができる。

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