サッカーアルゼンチン代表のリオネル・メッシが優勝トロフィーを掲げたワールドカップ(W杯)カタール大会の閉幕から約10日。「サッカーの王様」と呼ばれ、尊敬を集めてきた元ブラジル代表のペレさんが82歳で亡くなった。まるで、スーパースターの世代交代を受け入れたかのようなタイミングである。
近年は入退院を繰り返していたペレさんは、実は日本と縁が深い。1976年に、当時の世界的スター選手を集めた「ニューヨーク・コスモス」のメンバーとして来日。翌77年に東京・国立競技場で開かれた引退試合「ペレ・サヨナラ・ゲーム・イン・ジャパン」には、7万人を超える観客が集まった。
この興行による収益が日本サッカー協会の黒字化につながり、日本代表の強化につながったとされる。そう考えると、日本代表の躍進の影の功労者と言えるかもしれない。親日家のペレさんは84年に行われた釜本邦茂氏の引退試合にも「友情参加」という形で駆け付けた。
こうしたペレさんの姿を長年にわたって取材してきた98歳のサッカーライター、賀川浩さんにカタール大会前にW杯の魅力を尋ねたときにも、ペレさんの話が登場した。
「特別な選手は特別なチャンスというか、特別な運を持っています。ペレさんも、(アルゼンチンの英雄のディエゴ・)マラドーナもね、試合の後半の中ごろになって、両チームが盛り上がってきたときに、彼ら自身も盛り上がるんです」と前置きした賀川さんは「ああいう大天才は、彼ら自身が盛り上がってきて、それが爆発するわけですよ。そこが面白いと思うんですよね。特別な才能のあるプレーヤーが、大きな大会で力を発揮するというのも、W杯の面白みではあります」と説明していた。
カタール大会では、メッシが特別な選手であることを証明した。生前から「サッカー選手歴代ナンバーワンの座」をめぐって舌戦を繰り広げ、ペレさんの〝相棒〟ともいえるマラドーナ氏は2020年に死去している。今ごろは、後継者の資格を手に入れたメッシについて、20世紀のサッカー界を彩ってきた2人で、雲の上で語り合っているのではないだろうか。(編集委員 北川信行)
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