2050年のカーボンニュートラル目指し 新しいエネルギーの形を考える

脱炭素とエネルギーの安定供給の両立を考えるシンポジウム「新しいエネルギーの形を考える」(主催・産経新聞社、特別協賛・電源開発=Jパワー)がオンラインで開かれた。基調講演で元ニュースキャスターの村尾信尚・関西学院大教授が、エネルギーの「ベストミックス」の重要性を指摘。パネルディスカッションでは、脱炭素社会とエネルギーの安定供給の実現に向けて、原子力発電のあり方や水素エネルギーへの期待が示されたほか、二酸化炭素(CO2)を大気中に排出しない形で石炭などの化石燃料を有効活用することの重要性も指摘された。

【基調講演】 エネルギー源のベストミックスを

関西学院大教授 村尾信尚氏
関西学院大教授 村尾信尚氏

エネルギー問題を考えるときに避けて通れない状況の変化が2つある。

1つはロシアのウクライナ侵攻。フォンデアライエン欧州委員長は「プーチンはエネルギーを武器として使っている」と批判した。そういうなかで、日本のエネルギー供給は本当に大丈夫なのだろうか、エネルギーの安全保障、ひいては国家の安全保障は大丈夫なのか-という状況がある。

2つめは中長期的なことで、温暖化が進んでいる地球のこと。子供たちの未来のために、化石燃料による二酸化炭素(CO2)排出をいかに抑制していくかが求められている。

日本のエネルギー自給率は12%と非常に深刻だ。これを上げるには国産のエネルギー開発が重要になり、化石燃料からの脱却、つまり脱炭素化にもつながる。

世界の大きな流れは(CO2の排出を実質ゼロとする)カーボンニュートラルだが、政府は(2050年の達成に向けて)再生可能エネルギーを大幅に増やし、原子力も増やす一方、化石燃料は大幅に削減する目標を掲げている。

原発の再稼働や運転期間の延長をどう考えるのか。福島第1原子力発電所事故を経験したなかで、中立性、透明性がしっかり確保された場で、科学的な根拠に基づく議論を行ってほしい。

脱化石燃料を考えたとき、再生エネは有力なエネルギー源で、循環型社会を作るうえでも欠かせない。ただ、気象条件に左右されるし、まだコストが高い。

それ以外に注目されるのがCO2を排出しない水素だ。自然界には存在しないので人為的に作り出す必要がある。

このように、それぞれのエネルギーは一長一短。バランスよく、エネルギーミックスを考えることが重要だ。

日本は平成28年に電力の小売り自由化が始まり、電力会社を選べるようになった。「この電力会社はどういう電源(構成)で電力を供給してくれるのか」を考えながら、契約する電力会社を選んでもらいたい。

むらお・のぶたか 一橋大経済学部卒。昭和53年大蔵省(現・財務省)入省、主計局主計官、理財局国債課長、環境省総合環境政策局総務課長などを歴任。平成15年から現職。「NEWS ZERO」(日本テレビ系)メインキャスターを務めたほか、「マネーのまなび」(BSテレビ東京)出演中。令和元年から特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォーム顧問。

【パネルディスカッション】脱炭素社会とエネルギーの安定供給の実現に向けて

――日本は化石燃料が電源の約7割を占める

村尾 エネルギーの国産化を進めるということは脱化石燃料ということにもなる。再生可能エネルギーを使うということはエネルギー安全保障の観点からも温暖化対策という観点からも合理的だ。

――石炭にもメリットがある

菅野 石炭は中東に依存していない。調達のしやすさという観点からいえば化石燃料で一番だ。また、液化天然ガス(LNG)はマイナス150度での貯蔵が必要で、それでも蒸発してしまう。石炭は積んでおけばいいので、貯蔵という点でも優れている。

――原子力は炭素を出さないし、コスト競争力もある

村尾 福島第1原子力発電所事故も経験しており、正直、国民の理解を得るのは難しいと思う。ただ、国家のエネルギー政策を考えたときに原発の必要性や魅力は大きい。政府は正面から議論してほしい。

――Jパワーは青森県で大間原発を建設中だ

菅野 「より安全になった発電所」として受け入れてもらえるよう努力しなければならない。

それと当社は「Jパワー ブルーミッション2050」といって、2050年までにカーボンニュートラルを実現する、われわれのやっている事業としてこれを実現させるという目標がある。そのためには多様性が必要で、まずは再生エネを最大限導入する。それから原子力。化石燃料もCO2の地下貯留技術(CCS)などを活用して大気中に排出しないタイプのものに変え、最終的には水素発電にというのが目標だ。

地球環境産業技術研究機構主席研究員 秋元圭吾氏
地球環境産業技術研究機構主席研究員 秋元圭吾氏

――50年の前に30年の目標がある

秋元 政府は30年に再生エネ36~38%、原子力20~22%という。ただ、再生エネは設置場所の問題のほか、蓄電技術がより重要になってくる。揚水発電や蓄電池、さらには水素に変えて蓄えるという方法も組み合わせていく必要がある。

菅野 水素は自然界にはなく、人工的に作り出す必要があるのでその分、コストは上がる。そのコストを何とか抑え、極力安いエネルギー源として水素を活用することが事業者に与えられた使命だと思っている。

秋元 再生エネだが、日本は土地が狭く平地の面積が小さく、風況もあまりよくない。また、CCSについても海外の方が条件がいい。コストの最小化に向けて、いろいろなオプションを排除せずに考えていくということが重要。とりわけ日本では水素の重要性はかなり高い。

――国土が狭い日本に適した再生エネは

秋元 洋上風力発電はポテンシャルがある。日本は海が急に深くなるので浮体式も含めて開発していくことが重要だ。

電源開発(Jパワー)副社長 菅野等氏
電源開発(Jパワー)副社長 菅野等氏

――電力ネットワークの増強、安定性について

菅野 Jパワーはこれまで北海道と本州、本州と四国や九州といった地域間を大規模な送電線で結んできた。この経験を生かし、再生エネ電源と消費地をつなげるための新たな送電網の構築にも貢献したい。また、東日本と西日本の間の周波数の壁を乗り越えるためにも送変電設備も必要だ。

――今ある設備に新しい価値を付けて再び社会で活用していくアップサイクルについて

菅野 例えば最新式の風車にして1基当たりの出力を2倍にしたり、水力発電も発電機や水車を取り換えることで発電量を増やすことができる。それから長崎県で最初に取り組んでいるが、今ある火力発電所を改造して水素発電にもっていく。既存インフラを活用することは大切だ。

――エネルギーは多様性が重要だ

村尾 白か黒かではなく、グレーゾーンの中でライトグレーを求めていく。そういう発想で考えるべきだ。

秋元 エネルギー安全保障、安定供給や経済性、環境対策という3つのバランスをとりながら達成していくべきだ。

提供:電源開発株式会社(J-POWER)

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