来年4月に任期を迎える日本銀行の黒田東彦(はるひこ)総裁の後任人事を巡り、白川方明(まさあき)前総裁を副総裁として支えた山口広秀氏の名前が浮上している。黒田体制で「異次元の金融緩和」を支えた〝本命〟の雨宮正佳副総裁と中曽宏前副総裁に加え、3人目のプロパー(生え抜き)候補だ。安倍晋三元首相の経済政策「アベノミクス」と急速に距離を置き始めた政府・日銀の対応が、臆測に拍車をかけている。
岸田文雄首相は26日の講演で、黒田氏の後任について「4月の段階で最もふさわしい方を任命する」と述べるにとどめた。就任から間もなく10年がたつ黒田氏は財務省出身で、官邸筋は「首相は日銀との関係を大事にしており、黒田氏の次は日銀出身者が望ましいと考えている」と代弁する。
総裁人事は1月にも明らかになる見通し。直前になって山口氏が浮上したのは、安倍氏の急逝に伴い政権内の力学が変わったことが影響している。