【台北=矢板明夫】台湾の蔡英文政権が2024年から、兵役義務期間を4カ月から1年に延長すると決定したことが台湾社会で波紋を広げている。
若者の政治参加を促進する団体、台湾青年民主協会の張育萌理事長は地元メディアに対し、「台湾を守るためなら兵役延長を支持するが、訓練の内容、実施方法などについて詳しく説明してほしい」と強調した。台湾の若者の間では、入隊への抵抗はないが、ほふく前進、銃剣術など台湾軍が現在、行っている伝統的な訓練内容への不満が強く、「時間の無駄」として、訓練内容の改革を求める声が上がっていた。
一方、2年後に入隊する予定の16歳の長男を持つ台北市在住の主婦(50)は、「規則正しい集団生活を1年送ることは子供にとっていいことだと思っている。戦争は起きてほしくないけれど」と話す。
台湾住民の多くは、台湾海峡での軍事的緊張の高まりを受け「兵役延長は仕方ない」と考えているようだ。台湾の民間シンクタンク、台湾民意基金会が今月中旬実施した世論調査では、市民の73%が兵役延長に賛成しているという。
ただ、ある台湾の大手紙記者は「富裕層は今後、兵役から逃れるため、子供を高校から海外に留学させることが増えるだろう。社会の不公平感が高まる可能性がある」と指摘する。
台湾の最大野党、中国国民党の内部では、兵役延長について意見が割れているようだ。同党は27日、「兵役制度の改革を支持する」との声明を発表した。しかし、同党の幹部で著名なニュースキャスター、趙少康氏は同日、フェイスブックで「兵役延長に反対する。国民党が政権を取れば、兵役を4カ月に戻す」と明言した。趙氏は同党の24年の総統選挙の有力候補の一人で、党内で一定の影響力を持っている。